図7-6 SG伝熱管破損時に生じる現象とその解明実験及び実験結果例
図7-7 マルチフィジックス解析評価システムと解析結果例
ナトリウム(Na)冷却高速炉の蒸気発生器(SG)内で伝熱管が破損すると、Na中に高圧の水・蒸気が漏えいして高速高温の反応ジェットを形成します(図7-6)。SGは計器により漏えいを検出しNa-水反応を停止するよう設計されますが、それまでの間に反応ジェットが隣接する伝熱管に当たり、管壁の損耗(ウェステージ)や内圧破裂(高温ラプチャ)が発生して破損伝播(周囲の伝熱管が次々と破損)に至る可能性を評価することが重要となっています。実証試験を積み上げる旧来の評価方法は汎用性に欠け、経済性向上と安全性確保の両立を目指す設計最適化には不向きです。そこで本研究では様々な運転条件や設計オプションに対応可能な解析評価システムの構築に取り組みました。
現象解明とコード検証用データ取得のため、図7-6に示す体系的な実験を実施しました。これにより、支配的な反応素過程の同定、高温ラプチャ評価に関連するNa側/水側の熱伝達データや急速加熱時内圧破裂データの取得、液滴衝突エロージョンと流動加速型コロージョンの両者を考慮した局所ウェステージ相関式の導出等に成功しました。実機条件での現象解明としては図7-6に示すNa中蒸気噴出実験を実施し、ウェステージ環境やターゲット管損耗状況に関するデータを取得しました。また、実験結果の不確かさを定量評価し、それを含めた知見データベースを構築しました。実験結果を活用し、図7-7に示すように(1)反応ジェット(2)伝熱管(3)伝熱管内の3領域に対して可能な限り機構論に基づく解析手法を整備し、これらを組み合わせた解析評価システムを構築しました。(1)についてはウェステージ環境評価モデルを組み込んだSERAPHIMコードを整備しました。SERAPHIMでNa中蒸気噴出実験を解析し、温度分布やウェステージ発生位置が実験結果と整合することを確認しました(図7-7)。その他、(2)流体から伝熱管への熱移行と構造部応力評価及び破損判定モデルを導入したTACTコード(3)急速加熱条件に適用できるよう伝熱相関式を修正したRELAP5コード等を構築し、実験解析からシステムの妥当性を確認しました。構築した解析評価システムは安全裕度適正化を図ったSGの実現に寄与することができます。
本研究は、文部科学省からの受託研究「蒸気発生器伝熱管破損伝播に係るマルチフィジックス評価システムの開発」の成果です。