7-4 SG伝熱管の検査技術の向上を目指して

−有限要素法による「もんじゅ」SG伝熱管の3D渦電流探傷シミュレーション−

図7-8 多管モデルの試験体とその有限要素法モデル及び電磁場シミュレーション結果

拡大図(275KB)

図7-8 多管モデルの試験体とその有限要素法モデル及び電磁場シミュレーション結果

実際の支持板を模擬した試験体を製作し、支持板がECTに与える影響を実験とシミュレーションで調べることが可能になりました。更に従来の直管モデルから、より実機に近いヘリカル形状のモデルでのシミュレーションに進化しました。

 

図7-9 支持板とキズによるECT信号の比較結果

拡大図(207KB)

図7-9 支持板とキズによるECT信号の比較結果

支持板の下にキズがある場合の信号とキズがない場合の信号を比較したもので、解析結果が実験の探傷信号の特徴を上手く捉えています。(全周減肉とは管の周方向に全周に、局部とは1/4周にキズを付与することをそれぞれ示します。また管板厚に対して20%,30%に相当する深さのキズを付与しています。また、今回の実験・解析ともに、交流電流の周波数は250 Hzの結果です。)

高速増殖原型炉「もんじゅ」の蒸気発生器(SG)伝熱管は、水とナトリウムとを隔てるバウンダリの役割を持ち、高い信頼性が求められます。そのため、定期的に健全性を確認する方法として渦電流探傷(ECT)技術を開発しています。ECTは、伝熱管の内側に励磁コイルと検出コイルから成るプローブを挿入して、励磁コイルに交流電流を流すことで、伝熱管に渦電流を発生させ、減肉などのキズがあると、伝熱管の導電率や透磁率が健全部と異なるため、その違いを検出コイルで検知します。キズ信号は、キズの種類や大きさ以外に伝熱管を支持する支持板などが近くにあると影響を受けます。

そのため、プローブやキズの評価方法の開発には、より実際に近い条件での実験やシミュレーションが求められ、シミュレーションモデルの大型化や高精度化に対応する必要があります。そこで精度良く高速に処理を行うために、シミュレーションコードの三次元化や並列処理の開発を行いスーパーコンピュータで計算しています。

図7-8は代表的な構造物である支持板の多管モデルの試験体と有限要素法モデル及び磁場の強さをシミュレーションしたものです。伝熱管以外に支持板にも磁場が形成され支持板下のキズの検出に影響が懸念されます。図7-9は、支持板との摩耗で伝熱管にキズが存在した場合の信号変化を示したもので、実験とシミュレーションの結果を比較しています。信号強度に差はあるものの、波形の特徴はほぼ一致する結果となっています。

このように大規模かつ複雑なシミュレーションにより、様々な形状のキズを短時間かつ高精度に評価が行え、検査技術開発に大きく貢献することができます。また、検査データからキズを識別し、キズ(大きさなど)を評価する信号処理アルゴリズムの開発への寄与が期待されます。