8-1 最適な廃止措置計画を立案するために

−ウランを取り扱う核燃料施設の解体実績に基づく人工数の評価式の検討−

図8-4 解体の対象となるプロセス機器類の代表例と設置状況

図8-4 解体の対象となるプロセス機器類の代表例と設置状況

解体の対象となる機器類のうち、プロセス機器類は内部が放射性物質で汚染されており、いずれも架台や基礎で支持固定されていました。

 

図8-5 プロセス機器類の重量と解体に要した人工数との相関

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図8-5 プロセス機器類の重量と解体に要した人工数との相関

機器種類ごとの実績データは取得範囲や点数が限定されていますが、解体手順が類似した複数種のプロセス機器類をまとめると、共通の評価式を用いて精度良く人工数を予測できることが分かります。

役割を終えた原子力施設では、放射性物質による汚染を除去し、施設を解体撤去するための廃止措置が行われます。私たちは、廃止措置エンジニアリングシステムの一部として、様々な原子力施設の廃止措置計画立案に必要なコスト, 人工数, 被ばく線量, 廃棄物発生量などのプロジェクト管理データを、過去の廃止措置の実績データに基づいて予測する「管理データ評価システム」を開発しています。

同システムによるプロジェクト管理データの予測方法は、例えば機器の解体に係る人工数を予測する場合、対象機器の重量から、機器種類と解体手順ごとに定めた評価式を用いて計算します。この予測方法及び評価式は、小規模な原子炉施設に対して有効であることが確認されています。しかし、大規模な原子炉施設や原子炉以外の核燃料施設等への適用性については検証が必要です。このため、ウラン(U)を取り扱う核燃料施設である人形峠環境技術センターの製錬転換施設の実績データを分析し、適用性を検証しました。

製錬転換施設で解体された機器類の種類は、塔槽類,トラップ,粉砕機,分離機,圧縮機等です。機器種類ごとに機器重量と解体にかかわった人工数との相関を分析した結果、いずれも相関が見られ、Uを取り扱う核燃料施設についても原子炉施設と同様、機器種類ごとの評価式による人工数の予測は可能と分かりました。しかし、原子炉施設に比べ軽量の機器類が多く実績データの取得範囲が狭い、同種の機器数が少なく取得データが数点しかないなど、機器種類ごとの実績データは限定されているため、高精度の評価式は作成が困難でした。

そこで、機器種類ごとの評価式ではなく、設置状況と解体手順が類似する機器種類については同一分類としてまとめ、共通の評価式で予測することを検討しました。その結果、内部が放射性物質で汚染された複数のプロセス機器類は、いずれも架台や基礎で支持固定されており、解体手順もおおむね共通していることが分かりました(図8-4)。このことから、プロセス機器類の実績データをまとめたところ、機器重量と人工数との間に高い相関が見られ、ひとつの共通の評価式が作成できました(図8-5)。将来、Uを取り扱うほかの核燃料施設において、プロセス機器類を製錬転換施設と類似の解体手順で解体する際、その人工数は図8-5の評価式から精度良く予測できます。

今後も、原子力施設の種類や規模に応じた適切なプロジェクト管理データの予測方法を構築し、最適な廃止措置計画の立案に役立つシステムにしていく予定です。