8-2 廃棄物からの効率的なウランの分離

−塩酸によるスラッジからのウランの選択的分離プロセスの開発−

図 8-6 スラッジ,廃吸着剤等を保管しているドラム缶

図 8-6 スラッジ,廃吸着剤等を保管しているドラム缶

 

図 8-7 スラッジ及び廃吸着剤の外観

図 8-7 スラッジ及び廃吸着剤の外観

 

図 8-8 塩酸によるU分離プロセス

図 8-8 塩酸によるU分離プロセス


人形峠環境技術センターでは、鉱石から抽出したウラン(U)や使用済燃料を再処理して回収したUを用いて、六フッ化ウラン(UF6)を製造する技術開発を1964年から2001年まで実施しました。この結果、スラッジや廃吸着剤などUを含んだ廃棄物がおよそ1500 t発生しました。これらは現在ドラム缶に収納し、安全な状態で管理・保管しています(図8-6)。

これらの廃棄物はU含有量が多いもの,不溶解成分が多いもの,有害物質を含むもの,小粒状のものなど様々な性状のものがあります(図8-7)。様々な性状の廃棄物からUや有害物質を分離する方法として、塩酸を用いた手法を提案しています(図8-8)。この手法では、塩酸でUを溶解(溶解工程)し、その後、過酸化水素を添加して、溶液からUのみを選択的に沈澱・分離し(沈澱工程)、残った溶液中の微量のUや有害物質は、目的のイオンを選択的に吸着する樹脂(キレート樹脂)で除去します(微量U除去工程,有害物質除去工程)。分離したUへの不純物混入を低減するため、溶解工程では塩化アルミニウム(Al)を添加しますが、添加したAlは、後のAl回収工程で選択的に回収し、溶解工程で再利用します。溶解工程で塩酸に溶解しなかった不溶解残渣,微量U除去工程,有害物質除去工程の使用済みのキレート樹脂,中和工程の中和沈澱物は、将来的に廃棄物として処分することになります。

今回、Uを含んだ廃棄物のうち、フッ化カルシウム(CaF2)系及び珪藻土系のスラッジについて試験しました。沈澱工程で90%以上のUが分離できること、資源として活用できる可能性のある60〜70重量%の高濃度のUが分離できることなどが分かりました。また、微量U除去工程により、溶液中のUの放射能濃度を排出可能なレベルまで低減できることが分かりました。中和工程から発生する中和沈澱物も十分低い濃度になります。

本試験結果により、CaF2系及び珪藻土系のスラッジを塩酸で処理することによって、Uを高い割合で分離でき、最終的な中和沈澱物は、処分可能なU濃度に低減できることが示唆されました。今後は、ほかの形態のスラッジ,廃吸着剤への適用を検討していく計画です。