9-3 実構造体HIP接合部の破壊挙動を追う

−核融合原型炉開発で進められている低放射化フェライト鋼研究の最前線−

図9-7 微小試験片を用いたねじり試験法(単位:mm)

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図9-7 微小試験片を用いたねじり試験法(単位:mm)

ねじり試験法は、核融合ブランケット第一壁薄肉冷却管部のHIP接合部の健全性評価のために開発した新しい破壊試験法です。

 

図9-8 ねじり試験法とシャルピー衝撃試験法との比較

図9-8 ねじり試験法とシャルピー衝撃試験法との比較

ねじり試験法において、異なる条件で作製したHIP接合界面の品質を従来試験法と同様に評価することが可能になりました。

 

図9-9 ブランケット模擬構造体HIP接合部の健全性評価

図9-9 ブランケット模擬構造体HIP接合部の健全性評価

ブランケット模擬構造体HIP接合部の降伏強度及び最大強度が母材並みであることを初めて実証しました。

熱間等方圧加圧(HIP)接合法は、核融合ブランケット第一壁冷却管の主要な製作技術です。核融合プラズマからの高エネルギー中性子・熱負荷にさらされる過酷な条件で使用される第一壁HIP接合界面の健全性を明らかにすることは実用化に向けて非常に重要な課題となります。

従来幅広く利用されるシャルピー衝撃試験法は、既に確立された技術で多くの利点がありますが、評価に必要な試験片サイズが大きいため、HIP界面を含む薄肉冷却管部の評価には適用することができませんでした。そのため、新たな評価手法の開発が重要課題のひとつでした。

そこで私たちは、新たに微小試験片を用いたねじり強度試験法を考案(図9-7)し、HIP接合部の破壊検査技術の開発を進めてきました。これまでに、ねじり試験より推定される破壊エネルギーとシャルピー衝撃試験より得られる靱性に良い相関関係(図9-8)があることを明らかにしました。一方、ねじり試験によるHIP界面の破壊強度の解析手法を考案し、HIP界面の健全性を多角的に評価することを可能にしました。特に、最適な試験片サイズ・形状を見いだし、本技術の実用部材評価への適用性についても、十分な見通しを得ることができました。

本成果を足掛かりに、今回、開発したねじり試験法を実機サイズのブランケット模擬構造体のHIP接合界面に初めて適用し、その強度特性を評価しました(図9-9)。その結果、HIP接合界面において、母材並みの強度特性を示すことが明らかとなり、ブランケット模擬構造体HIP接合界面の健全性を初めて実証することに成功しました。

本研究成果は、これまで困難であったHIP接合部の健全性を直に評価することが可能になっただけでなく、将来の核融合原型炉の構造設計規格・基準を作り上げていくための重要な指針を与えるものです。