7-2 高速炉直管型蒸気発生器の熱流動評価手法の開発

−3次元解析モデルの構築と試験結果との比較−

図7-7 SG試験解析モデル

拡大図(116KB)

図7-7 SG試験解析モデル

直管型2重伝熱管SGの伝熱特性を評価するために実施された2重伝熱管SG小型モデル試験を対象に、TSGの解析機能の検証を実施するため、3次元の解析モデル((a)解析体系、(b)水平断面)を作成しました。

 

図7-8 SG試験解析結果

図7-8 SG試験解析結果

本研究で開発しているTSGで解析を行うことで、従来の2次元軸対称を仮定した解析手法では不可能であった(a)の周方向に不均一な温度分布を詳細に評価することが可能となりました。また、(b)の高さ方向の温度分布から、ナトリウム温度について、解析結果が試験結果と良い一致を示すことを確認し、SG内の特徴的な伝熱流動の様子(予熱域、核沸騰域、膜沸騰域、過熱域)を計算できることを確認しました。

 


ナトリウム冷却高速炉の蒸気発生器(SG)として、安全性及び信頼性の向上のため直管型2重伝熱管方式の採用が検討されています。この直管型SGでは、円筒形の容器内に多数本の伝熱管を有しており、管外のナトリウム加熱によって管内の水が沸騰し、蒸気が発生します。このとき、伝熱管温度偏差や伝熱管の熱延びを評価し、伝熱管の座屈や伝熱管を支える部分の破損を防止する必要があります。温度偏差を発生させる要因には、伝熱管の管束部への偏ったナトリウムの流入、管束部内での非一様な流れ、不具合等により閉止した伝熱管の伝熱特性の変化などが挙げられますが、従来の2次元軸対称を仮定した解析手法ではこれらを精度良く予測することは不可能でした。このため、SG全体を3次元的にモデル化し、SG内部の温度分布を精度良く予測する新たな解析評価手法の開発を目指しました。

本研究では、ナトリウム側の3次元解析と水側の多チャンネル解析を組み合わせた連成解析システム(TSG)を開発しています。具体的には、ナトリウム側はSG内の3次元熱流動を効率良く解析するため伝熱管の体積比率を考慮した多孔体モデルを採用し、水側は伝熱管内の沸騰現象を解析するため気液二相流モデルを採用した並列多チャンネル解析コードを新たに開発し、さらに両者の熱的連成を考慮できる解析手法を整備しています。今回、開発した解析手法の妥当性を確認するため、既存の試験を対象とする解析を実施し、試験結果との比較を行いました。

解析対象とした試験は、水が流れる伝熱管と水が流れないダミー管及びSG形状を維持するための金属棒(タイロッド)を有する2重伝熱管SGの小型モデル試験です。図7-7(a)に解析体系、図7-7(b)に水平断面を示します。TSGによる解析結果は、図7-8(a)に示すように、伝熱管が存在する中心部分よりタイロッド及びダミー管が存在する外側でナトリウム温度が高くなっており、SG内の構造物の配置に起因する温度の変化をよく捉えています。また、図7-8(b)の伝熱管に沿った温度分布の比較では、水の予熱、核沸騰、膜沸騰及び過熱蒸気の過程がそれぞれ計算されており、実験結果とも一致しています。これらのことから、TSGは、SG内の伝熱特性を3次元的に評価可能であるとの見通しを得ました。

今後、妥当性を確認する解析をさらに実施した上で、大型直管型SGを対象とした3次元的な非対称温度評価及び伝熱管の構造健全性評価を実施していきます。