7-1 高速炉機器の構造健全性評価技術の高度化を目指して

−高速炉配管の破断前漏えい評価法の提案−

図7-4 ナトリウム冷却高速炉(SFR)配管の特徴

図7-4 ナトリウム冷却高速炉(SFR)配管の特徴

SFR配管は薄肉大口径であり、材料の改良9Cr-1Mo鋼は降伏点が高く延性が低いのが特徴です。これらを適切に考慮したLBB評価法とする必要があります。

 

図7-5 SFR配管に対するLBB成立性評価フロー(案)

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図7-5 SFR配管に対するLBB成立性評価フロー(案)

安定限界亀裂長さ(不安定破壊してしまう限界の亀裂長さ)が、検出可能亀裂長さ(漏えい検知設備によって検知可能な漏えいを生じる亀裂長さ)及び貫通時亀裂長さ(亀裂が板厚を貫通すると仮定した場合の亀裂長さ)のいずれよりも大きければ、LBB成立と判定します。破壊評価と漏えい評価はSFRの特徴を考慮した評価法となっており、貫通亀裂長さ評価は、ユーザーの利便性を考慮し、図7-6に示すような線図の形で与えられています。

 

図7-6 貫通時亀裂長さを与える線図

図7-6 貫通時亀裂長さを与える線図

疲労亀裂進展速度式の指数mをパラメータとした線図を用意しました。

 


ナトリウム冷却高速炉(Sodium-cooled Fast Reactor:SFR)では、改良9Cr-1Mo鋼という材料を冷却系配管に適用することが検討されていますが、この材料は、図7-4に示すように、従来の配管材料であるオーステナイト系ステンレス鋼に比べ、相対的に強度が高く、延性が低いという特徴があります。また、SFRの配管は薄肉大口径であることが特徴です。さらに、SFRでは内圧は小さく、熱膨張による変位制御的な熱応力が支配的であることが特徴で、その特徴を反映して、破断前漏えい(Leak Before Break:LBB)の成立する部位については、連続漏えい監視による供用期間中検査が適切であるとする検査基準の導入が考えられており、これを規格として発刊することが志向されています。これと平行して、その前提条件となるLBB成立性を評価する方法の開発に取り組んでいます。

LBBとは、構造物中に欠陥が存在し、それが進展して貫通に至るとしても、破断に至る前に内部流体の漏えいを検知することにより適切な対応措置を取ることができるという概念です。

まず、図7-5に示すSFR機器に対するLBB成立性評価フロー(案)を提案し、そして、前に述べたSFRの特徴を考慮して、安定限界亀裂長さや、検出可能亀裂長さを評価する方法をそれぞれ開発し、LBB成立性評価に取り入れることとしました。また、貫通時亀裂長さについては、材料特性と荷重条件だけでほぼ決まることを確認した上で、これらをパラメータとする評価線図を用意し、特別な知識が無くても簡便に評価できる方法を整備しました(図7-6)。さらに、過去の実験データ等の調査に基づき、それぞれの評価が保守的に行われるよう、適切な安全率を提案するとともに、評価に用いる材料特性等を例示し、ガイドラインとして整備した場合に一般ユーザーが使いやすい評価法となるように工夫しました。

開発したLBB成立性評価法を日本機械学会の評価ガイドラインとして発刊するため、今後、技術的な貢献をしていく予定です。