図7-14 遠心抽出器の構造
図7-15 洗浄機能の追加
図7-16 洗浄機能追加による効果(ロータ内の上部)
再処理工場の抽出工程で使用する機器として、原子力機構では遠心抽出器の開発を進めています(図7-14)。
遠心抽出器では、高速で回転するロータの外側(ハウジング内)で水相と有機相が混合され、遠心力の加わるロータ内で水相、有機相に強制的に分離されます。これにより、遠心抽出器はこれまで再処理工場で使用されてきたミキサセトラやパルスカラムに比べて、短時間で二相の混合と分離が可能で抽出剤等の有機成分の劣化を抑制し、さらには小型であることから臨界管理が比較的容易であるといったメリットがあり、将来の再処理工場への適用が期待されています。
遠心抽出器は現在稼働中の再処理工場の中で、製品の精製工程で適用実績がありますが、ウラン、プルトニウムと核分裂生成物を分離する共除染工程には適用が困難とされています。これは、使用済燃料の溶解液にせん断粉や核分裂生成物中の不溶解成分から成るスラッジが含まれるためです。大部分のスラッジは抽出工程前の清澄工程で取り除かれますが、微小で軽いスラッジは清澄工程で取り除くことが難しく、完全に除去することはできません。遠心抽出器の処理液にスラッジが混入すると、遠心力によってロータ内に蓄積し、工程運転に悪影響を与えることが実用化の上で大きな課題となっています。
私たちは、この課題を解決するため、遠心抽出器へのスラッジ流入時の挙動を把握した上で、その際の相分離及び抽出性能に与える影響を調査しました。遠心抽出器に流入したスラッジは、遠心力の加わるロータ内に堆積することが確認され、一定量堆積すると相分離性能が低下し、それにより抽出性能への影響も懸念されました。
以上のことから、遠心抽出器の安定運転を図るためには、効率的な洗浄が可能となる技術が必要不可欠と考え、洗浄機能の導入を検討しました。導入にあたっては、構造と洗浄性能の関係を広く検討し、洗浄機能付遠心抽出器の構造を体化しました(図7-15)。その特長としては、洗浄液を遠心抽出器の上部から供給する構造にすることで、放射性物質が装置外へ漏えいするリスクが低く、メンテナンスも容易であることが挙げられます。
スラッジ堆積下での洗浄試験により、この新型の遠心抽出器は洗浄機能を有しない遠心抽出器に比べ、洗浄時間、洗浄液量ともに1/5程度で、ほぼ全てのスラッジが洗浄可能であり、遠心抽出器の実用化を図る上で課題であったスラッジ対策を確立しました(図7-16)。
本研究は、経済産業省からの受託研究「平成25〜27年度高速炉等技術開発」の成果の一部です。