3-1

反応度事故時の燃料挙動研究
―燃料破損の影響を高精度に予測する―




拡大図(50KB)

図3-1 長期間使用された燃料が反応度事故時に破損した場合の機械的エネルギー発生過程

長期間使用された燃料ではペレット結晶粒の境界に核分裂生成ガス(FPガス)が多量に蓄積されており、事故時の燃料温度急上昇に伴うFPガスの熱膨張により燃料が微粒子化します。溶融した燃料が冷却材と接触した場合に爆発的な蒸気発生が起こることは以前から知られていましたが、微粒子化により表面積が増大することで、燃料が溶融していなくても大きな機械的エネルギーが発生することを明らかにしました。



図3-2 燃料微粒子サイズと機械的エネルギー発生量の関係

燃料微粒子が小さい、つまり重量当たりの燃料表面積が大きいほど、熱から機械的エネルギーへの転換が効率よく行われることを定量的に示しました。ポリエチレンバッグに入れた二酸化ウラン粉末による実験結果(図の印)は、原子炉で長期間使用された燃料棒を用いた実験で得られた結果(図の印)と同程度の転換率を示しており、両者における機械的エネルギー発生のメカニズムが同一であることを示しています。




 原子炉燃料からより多くのエネルギーを取り出すために燃料の使用期間を延ばすことを高燃焼度化と呼びます。高燃焼度化は、資源の有効活用や燃料サイクルコスト低減などの理由から世界各国で推進されていますが、一方で、被覆管の劣化が進行するなどの可能性も考えられるため、万が一事故が起こった場合についても燃料の安全性に与える影響を十分に検討しておく必要があります。
 原子炉安全性研究炉(NSRR)では、反応度事故(RIA)を模擬した実験を行い、燃料の破損が原子炉の安全性に及ぼす影響を評価しています。原子力発電所で長期間使用された燃料棒を対象とした実験に加え、個別の現象を抽出し、その効果を定量化するための実験も行っており、その一環として、被覆管が破損した際に微粒子化した燃料が冷却水中に放出される過程(図3-1)を、予め粉砕して粉末状にした二酸化ウランで模擬した実験を行いました。
 この実験により、微粒子化により重量当たりの表面積が増大した燃料が短時間のうちに冷却水中に放出され、多数の燃料微粒子がほぼ同時に冷却水と接触した場合、冷却水の一部が勢いよく持ち上げられる程の激しい蒸気発生が起こることを明らかにし、また、その時に発生する機械的エネルギーの量が燃料微粒子の大きさに依存することを定量的に示しました(図3-2)。同時に、長期間使用された燃料を用いた実験でこれまでに観測されていた冷却水の飛び上がりが、燃料棒からのFPガス放出ではなく、微粒子化した燃料と冷却水との熱的相互作用によるものであることを示しました。



参考文献
T. Sugiyama, Studies on Clad/Coolant and Fragmented-Pellet/Coolant Heat Transfer in High Burnup Fuel Behavior during RIA, JAERI-Review 2004-021, 59 (2004).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選びください。

たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
Copyright(c) 日本原子力研究所