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レーザーレーダーで大気上空のエアロゾルを捕捉!
―世界初の大気中に浮遊する微粒子を遠隔監視できる新型計測器―




拡大図(50KB)

図9-1(中図) レーザーレーダーによるエアロゾル計測法の模式図

レーザーパルス光を大気上空に向けて照射し、レーザー光が通過する領域にあるエアロゾルから発生する微弱な後方散乱光(反射光)を高速シャッター付の高感度CCDカメラで計測すると、限られた空間領域に浮遊するエアロゾルのみを図9-2のように可視化することができます。

図9-2(左図) 大気エアロゾル可視化画像(世界初!)

現在500 m先の空間に浮遊するエアロゾルからこのような散乱光画像が取得できます。

図9-3(右図) エアロゾル粒径分布図

図9-2の散乱光の斑点画像をコンピュータ解析することにより大気遠方のエアロゾル濃度、粒径(0.5〜数10ミクロン)及び粒径分布をリアルタイムで精度良く求めることができます。




 近年、大気汚染の人体への影響や地球温暖化などの大気環境問題を解明するために、その原因となるエアロゾル(大気中に浮遊する液体、固体微粒子)の広範囲な調査が求められています。しかしながら、従来の計測法では、リアルタイム(実時間)計測と大気上空の遠隔計測が不可能なために、その要求にうまく対応することは困難です。
 私たちは、放射性物質を含むエアロゾルの大気中での移行予測とモニタリングに関する技術開発を目的として、原子力関連施設から放出されるエアロゾルを遠隔計測する方法を新たに開発しました。これを一般大気環境用に応用すれば、現在の計測器の問題点を克服し、精度良くリアルタイムでエアロゾルの飛散状況を監視できます。
 開発した計測装置は、レーザーレーダーと呼ばれる電波の代わりにレーザー光を用いるレーダーを応用したものです。図9-1に示すように(1)レーザー装置、(2)照射光学系、(3)集光光学系、(4)高速シャッター付高感度CCDカメラ及び(5)制御解析装置から構成されます。計測手法の原理は、カメラのフラッシュ撮影と同様です。フラッシュに相当する(6)レーザーパルス光を大気中に拡大して照射すると、(7)レーザー光の通過領域にある(8)エアロゾル粒子群から(9)後方散乱光(反射光)が発生します。この光をレーザー出射時間から任意の時間後に(4)高速シャッター付高感度CCDカメラで計測すると(7)レーザー通過領域の遠方の(10)限られた空間に浮遊するエアロゾルからの(9)散乱光を図9-2のような画像として計測することができます。この画像の白い多数の斑点は、その限られた空間のエアロゾル個々からの散乱光であり、その輝度は粒子の大きさに依存するので、これを画像解析することにより図9-3のように大気中のエアロゾルの濃度、粒径分布を直接リアルタイムで遠隔計測することができます。レーザー光のエネルギーや集光光学系を改良することで1 km先のエアロゾルも同様に計測することが可能です。
 この計測法は、離れた空間に浮遊する微粒子をリアルタイムで濃度を計測できるため、一般大気計測用のみならず、微粒子濃度が厳格に管理されているクリーンルーム等の産業用の計測器としての活躍も期待されています。



参考文献
A. Ohzu et al., Feasibility Study of Imaging Lidar Technique for Remote Particle Counting, Proc. 7th International Congress on Optical Particle Characterization(OPC2004), Aug.1-5, 2004, Kyoto, Japan, §11.3, CD-ROM刊行予定.

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2004
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