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核共鳴散乱で元素・サイトを分離して格子振動を観察
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マグネタイト[Fe3O4]が、低温でフェルベー転移と呼ばれる電気伝導度の急激な減少(金属絶縁体転移)を示すことはよく知られていますが、その物理的起源は、多くの研究にも関わらず、未だ解明されていません(図5-7)。その起源を探るには、フェルベー転移の舞台となっているFe3O4のスピネル構造のBサイトに属する鉄(Fe)イオンの電子状態や格子振動状態の温度依存性を詳細に調べることが非常に重要です(図5-8)。 一方、放射光を特定元素の核共鳴励起エネルギー近傍でエネルギーを変化させて試料に入射し、共鳴元素の振動状態を反映した非弾性核共鳴散乱を観測すると、物質中の特定元素の格子振動状態密度の測定(核共鳴非弾性散乱法)が可能になります。しかしながら、Fe3O4のように結晶学的に異なるサイトに位置する同種元素(Fe)の格子振動状態密度を分離して計測することは困難であると考えられていました。これに対し、私たちは、核共鳴非弾性散乱スペクトルの測定を行う際に、エネルギーの各点で異サイト中のFe原子の電子状態の相異を反映した量子ビートパターンの変化を時間スペクトルとして観測し、各サイトのFe原子がフォノン状態密度に寄与する成分比率を求めることにより、Fe3O4のBサイトのFe原子の格子振動状態密度を測定できることを世界で初めて提案し、実証しました(図5-9)。本手法は、マグネタイトの低温相のフェルベー転移のみならず、複雑な構造を持つ化合物の物性発現機構の解明を行う際の強力なフォノン物性研究ツールになると期待されます。 |
●参考文献 M. Seto et al., Site-Specific Phonon Density of States Discerned Using Electronic States, Phys. Rev. Lett., 91(18), 185505 (2003). |
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