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我が国の軽水型原子力発電所で使用されている燃料は関係者の種々の努力によって高い信頼性が達成されており、今後の課題として、資源の有効利用、燃料サイクル費の低減や使用済み燃料の発生量抑制を念頭に置いた高燃焼度化に重点が移ってきています。 燃料の高燃焼度化に伴って燃料が長期間炉内に滞在すると、ウランの核分裂で発生するFPガス(核分裂気体生成物)の量が増えて被覆管内部のガス圧力が上昇したり、二酸化ウランペレットの熱伝導率が低下します。さらに、ペレットの外周部(リム部)でプルトニウムが生成・燃焼する「リム効果」によってFPガスの放出の促進、熱伝達効率の低下あるいは冷却水との反応による被覆管の腐食など種々の現象が現れます。 我が国では高度な技術を基に、これらを考慮した優秀な燃料が製造されていますが、その燃料を原子炉で燃やした後で設計時に予測された性能を有していたことを確認し、さらに高性能を有する燃料の開発についての知見を得るために照射後試験が行われています。 原研の燃料試験施設は、高燃焼度燃料の照射後試験に対応するため、科学技術庁の委託をうけ、平成2年度から超微小硬度計、熱拡散率測定装置等の照射後試験装置を開発するとともに、独自にパンクチャー試験装置及び脱燃料装置を開発し、高燃焼度燃料の照射挙動に関する貴重なデータを提供しています。 超微小硬度計は、中性子照射に伴う燃料被覆管の機械的特性変化を調べる装置で、図11-4に示す測定部において被覆管断面(厚さ約0.6 mm,ジルコニウム厚さ約0.07 mm内張りの場合あり)に10μm 間隔で圧子を押込み、0.1〜200グラムの荷重範囲で固さ測定ができるので、図11-5に示すようにジルコニウム内張りの硬さの変化を詳細に検査し、ジルコニウム内張りがPCI(ペレット−被覆管の相互作用)の緩和に有効であることが確認されました。 熱拡散率測定装置は、図11-6に示す原理で1,800 ℃の高温まで照射済ペレットの熱拡散率を測定することができます。この装置で図11-7に示すように、ハルデン炉で63 GWd/t の燃焼度まで燃やしたペレットの熱拡散率データを取得して、世界的にも注目を集めました。 パンクチャー試験装置は、FPガス圧力等を測定するもので、測定系自由容積を従来の1/3に低減し測定精度を向上させるとともに、測定時間も1/3以下となり、測定の迅速化が図られました。 脱燃料装置は、図11-8に示すようにPCIによって被覆管に固着したペレットを、被覆管に熱的、機械的損傷を与えることなく取り除く装置で、これにより高燃焼度燃料被覆管の試験片を作製し、材料強度試験を成功裡に遂行することができました。また、この方法・装置は科学技術庁の「注目発明」に選定されたほか、国際特許も取得しました。 |
参考文献
T. Kodaira et al., Present Status of PIE Techniques in Tokai Hot Cell Facilities, Proceedings, The 5th Asian Symposium on Research Reactors, May 29-31, 1996, Taejon, Korea (1996) . |
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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果1996 copyright(c)日本原子力研究所 |