10-3 特大規模を有する原子力施設のための組立構造解析

−部品に分けて特大規模の構造を解く技術−

図10-4 提案手法の概要
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図10-4 提案手法の概要

部品ごとに構造データを作成し、解析用データとして複数のスーパーコンピュータに分散させ、部品と部品の接合状態を考慮した連携解析により、部品点数1000万超の原子力施設全体を解析するためのシステムの枠組みを実現しました。解析結果をコンピュータ上で可視化するときにも多くのメモリを必要とするため、複数のスーパーコンピュータを使うことで大容量処理を可能としました。データ作成から解析実行、結果の可視化まで、一連の作業をすべて機構内外のスーパーコンピュータに分散させることで、特大規模を有する原子力施設の構造解析の実現可能性を見いだしました。

システム計算科学センターでは、特大規模を有する原子力施設のための解析技術の一つとして、高度計算科学技術を用いてスーパーコンピュータ上に仮想振動台を構築し、原子力施設全体の地震時の応答をシミュレーションする技術の研究開発を進めています。シミュレーションの精度を高めるには、施設を構成している各部品の応答(応力,変位等)が接合状況によりどのように互いに影響しあうかを考慮する必要があります。原子力施設は膨大な数の部品から構成されているため、一つのスーパーコンピュータでは計算できないほどの処理量となり、従来技術では扱えないという問題がありました。

そこで、
@部品と部品の接合状態を簡易的に考慮することで部品ごとのデータ処理を可能とし、計算のための処理量を低減できる手法
Aネットワークを介して複数のコンピュータを結び利用者からはあたかも一つの高性能なコンピュータとして扱えるグリッドコンピューティング環境(AEGIS:Atomic Energy Grid Infrastructure System)を用いることにより、異なる複数のスーパーコンピュータを連携処理させて解析を高速化する手法
を提案し、大洗研究開発センターにある高温工学試験研究炉の原子炉圧力容器及び冷却系統設備を対象に静的弾性解析を実施しました。

その結果、原子力施設全体解析の実現に向けた技術革新が図れる可能性を見いだせたので、その成果を米国シアトルで開催された世界最大の高性能計算機科学国際会議SC05の大規模解析技術コンクールへ応募したところ高く評価され、“Honorable Mention”賞を受賞しました。