図11-6 MOXバイパック燃料ピン製造フロー
図11-7 金属ウラン顆粒添加による燃料熱伝導度の変化
核兵器の解体によって生じる兵器級プルトニウム(以下、解体プル)は、米露の軍縮により数十トンの規模となっています。これらを処分するには、原子炉での燃焼処分、高レベル廃棄物(ガラス固化体)で覆い深地層に埋設する固定化処分等が考えられますが、現在では、燃焼処分が有望です。
プルサーマル燃料として軽水炉で燃焼する方法が技術的には実績がありますが、ロシアには産業規模でMOXペレット燃料を製造する施設はなく、また軽水炉でのMOX燃焼経験もないためこれを西側諸国から導入するには巨額の資金が必要となります。
私たちはロシアの研究所と共同研究を行い、ロシアの振動充てん(バイパック)燃料製造技術(図11-6)を用いてMOX燃料を製造し、ロシアの高速炉(BN600)で燃焼するBN600バイパックオプションの実現性を確認してきました。当初実績がなく、処分方法として疑問視されていましたが日露共同研究の成果により現在では処分シナリオの一部としてG8の関係国に認められるに至っています。この方法は、シンプルでコンパクトな燃料製造方法を用いるため処分コストが安価で、ロシアの固有技術を適用するため技術移転等に対し問題が少ないのです。
日露共同研究は、BN600をハイブリッド炉心化(約23 %をMOX燃料に置換)するための枢要な技術について、@模擬炉心の臨界試験、A3体先行照射試験、B炉心・燃料解析、C安全解析、Dバイパック燃料製造施設整備の確認・検討を行ってきました。これらはDを除いて終了し、ハイブリッド化の技術的準備は整っています。
3体先行照射試験では、実際に解体プルからMOXバイパック燃料を製造し、BN600で照射し、ホットラボで照射後試験を実施しました。これにより、バイパック燃料のペレット燃料との類似性、燃焼時の燃料安定性、被覆管との機械的・化学的相互作用等を明らかにしました。一方、炉外試験ではバイパック燃料の熱的特性を評価する試験を行い、バイパック燃料に特有の金属顆粒状の酸素ゲッターの添加により燃料熱伝導度が10 %程度改善されることを明らかにしました(図11-7)。これらはバイパック燃料の燃焼挙動を解明する評価コードのモデル化等に利用していく予定です。
G8が国際支援の下に実施を図っている34トンのロシア解体プル処分計画全体は、種々の問題で停滞しているものの、米露を中心にバイパックオプションを先行する動きがあり、今後の動きが注目されます。