1-12 フォールトツリー解析による原子炉トリップの頻度を評価

−「もんじゅ」の原子炉計画外停止頻度と要因の推定−

図1-29 系統の概略と原子炉トリップの要因

図1-29 系統の概略と原子炉トリップの要因

系統を構成する設備機器の故障が原子炉トリップに至るかどうかを明らかにし、フォールトツリー(樹形図)を作成します。

 

表1-3 主ポンプの故障事例(CORDSより)

図1-29 系統の概略と原子炉トリップの要因

図1-30 FTA結果

図1-30 FTA結果

どの設備機器の故障が原子炉トリップに対して大きな寄与を持つのかを示しています。

図1-30 FTA結果

図1-31 故障への対応

表1-3に示す事例の故障について、主ポンプのシャフトの熱対流防止板や、アルゴンガスブローによるナトリウム酸化物の蓄積防止対策がとられている様子を示しています。

高速増殖原型炉「もんじゅ」をはじめ、原子力プラントにおいては、安全・安定な運転が求められ、出力運転中における計画外停止をできる限りなくすることが重要です。「もんじゅ」では、機器の故障、誤作動や誤信号に起因する原子炉トリップにおける重要な因子を特定し、運転信頼性の向上に資する目的で、フォールトツリー解析評価(以下、FTAという)を行い、原子炉トリップの発生頻度を推定すると共に重要な機器故障などの要因の摘出を行っています。

高速炉機器信頼性データベースCORDS及び国内軽水炉機器故障データベースを用いた機器故障率を「もんじゅ」のFTAに適用し、原子炉トリップ頻度を解析した結果、1.2回/炉年となり、重要な機器は1次及び2次主冷却系の主循環ポンプであることがわかりました。これは機械式のナトリウムポンプであり、過去の故障事例を調査した結果、「もんじゅ」では、当該機器の故障対策がなされており、実際には、上記の原子炉トリップ発生頻度より更に小さくなることが予想されると共に、高い運転信頼性が確保されていることを確認しています。

本研究により、「もんじゅ」において運転信頼性に係る重要な機器を特定できたこと、現状得られている機器故障率を用いて評価した結果、「もんじゅ」は国内軽水炉の原子炉トリップ頻度をやや上回る程度の計画外停止を将来予測として想定できることが明らかとなったこと、更に、今後、「もんじゅ」において設備変更等が必要になった場合、FTAを適切に改良することにより、原子炉トリップ頻度はどう変化するかを評価できるようになったことが成果として意義があると考えています。