1-3 コンパクトにした炉内の速い流れをいかに静かに導くか

−ナトリウム冷却大型炉の炉内流動適正化−

図1-6 ナトリウム冷却大型炉の原子炉容器内構

 

図1-6 ナトリウム冷却大型炉の原子炉容器内構造

 

図 1-7 1/10縮尺モデル試験による速度場測定と流動適正化方策の効果

図 1-7 1/10縮尺モデル試験による速度場測定と流動適正化方策の効果

実機設計の1/10縮尺で炉容器上部プレナムを模擬した装置を用い、炉内流動場を計測すると共に、FHMプラグを図中(2)のように深く挿入することで流れの方向を変え、液面近傍の流速を低減しました。
計測には独自の画像ノイズ除去手法を組み合わせた粒子画像流速計測法(PIV)を適用し、詳細な速度場を把握しました。

図1-8 ガス巻き込み発生状況と数値解析例

図1-8 ガス巻き込み発生状況と数値解析例


FBR実用化戦略調査研究の一環としてナトリウム冷却大型炉の要素技術開発を実施しています。図 1-6は炉容器内部の形状を示しており、大出力かつコンパクト化することにより経済性の向上を図っています。

コンパクト化のため、炉心上部機構(UIS)には燃料交換機(FHM)のアームが通過できる切り込みを設けると共に、UISの内部にナトリウムの通過を許す革新的構造(コラム型)としています。これらの結果、特に炉心を出てUIS切り込みを通って上方へ向かう速い流れが形成され、液面近傍の流速が増大することで、カバーガスを巻き込む可能性が生じました。液面下に水平の板(D/P)を設けて流速の低減を図りましたが、ガス巻き込みの防止が設計成立性を示す上で重要な課題となりました。

そこで、実験と数値解析による炉内流動の適正化研究を実施しました。図1-7に示すように炉内の流速分布を定量的に測定することによって、液面に向う速い流れを効果的に遮断するFHMプラグを考案し、液面近傍での流速を当初の設計形状に比べ約半分に低減しました1)。更に図 1-8に示すような数値解析を適用することによって、くぼみ渦からのガス巻き込み発生に関する評価手法を構築しました2)。それらによって、ガス巻き込み発生の回避に見通しを得ることができました。