表1-2 高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究フェーズIIの候補概念
図1-19 フェーズII主概念(a)の軽水炉から高速増殖炉への移行特性
図1-20 フェーズII候補概念の天然ウラン累積需要量
ウラン資源の効率的な利用と高レベル放射性廃棄物の削減が期待される高速増殖炉サイクルについて、政府は 2005年10月14日に閣議決定した原子力政策大綱の中で2050年頃に商業ベースの導入を目指すとしています。原子力機構では、この高速増殖炉サイクルの実用化 像と商業化に至るまでの研究開発計画を2015年頃に国へ提示する目的で「高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究」を進めています 。 2005年度に終えた本研究のフェーズIIでは、高速増殖炉システムと燃料サイクルシステムの組合せが異なる複数の候補概念のうち、代表的な候補概念 (表1-2)を対象として、軽水炉サイクルから高速増殖炉サイクルへの移行特性をシナリオ解析により評価しています。
このシナリオ解析では、将来の原子力発電設備容量や核燃料サイクル施設計画、高速増殖炉サイクルの本格導入開始時期、軽水炉使用済燃料再処理廃 液に含まれるマイナーアクチニドのリサイクル方法などをパラメータとしたシナリオ検討とサイクル諸量解析を行い、軽水炉から高速増殖炉への移行期間、天然 ウラン累積需要量、軽水炉使用済燃料貯蔵量、高レベル廃棄物貯蔵量などの観点から各候補概念の特徴を評価しました。標準的な高速 増殖炉の導入スキームとして、寿命を終えた軽水炉に代わって高増殖型高速増殖炉を導入し、プルトニウム需給バランスに応じて低増殖型高速増殖炉が段階的に導入されると仮定した場合、主概念 (a)についてみると、新計画策定会議と同一条件(将来の原子力発電設備容量2030年以降約58 GWe一定、2050年高速増殖炉導入開始)の下では来世紀初頭に軽水炉から高速増殖炉に移行し終えることが判ります(図1-19)。また、同様に解析したフェーズIIのその他の候補概念、軽水炉プルサーマルマルチリサイクル及び軽水炉直接処分の天然ウラン累積需要量を比較すると(図1-20)、候補概念(a)〜(d)を採用した場合、来世紀の初頭あるいは中旬にかけて天然ウランを輸入しなくても原子力の持続的な利用が可能になることが判ります。
シナリオ検討結果の一例として、軽水炉から高速増殖炉への移行期間をなるべく短くし天然ウラン需要を節約することに着目した場合には、炉内プル トニウムインベントリが小さく、ある程度増殖比の高い高速増殖炉システムが望ましく、特に移行期においては軽水炉及び高速増殖炉の使用済燃料からの回収プ ルトニウムを有効に活用する必要があることが分かりました。