図12-1 「もんじゅ」概要図
図12-2 ナトリウム漏えい以降の炉心崩壊熱の推移
「もんじゅ」の冷却系は、炉心の熱を取り出す一次冷却系,一次冷却系の熱を水・蒸気系に伝える二次冷却系,そしてタービン・発電機を回すための水蒸気系の三つの冷却系で構成されています(図12-1)。これら三つの冷却系統にはそれぞれ三つのループがあります。
「もんじゅ」では、運転再開に向けた改造工事を2005年3月より開始しました。改造工事の主な内容は以下のとおりです。
1.二次主冷却系温度計の交換・撤去
2.ナトリウム漏えいに対する改善
3.蒸発器ブローダウン性能の改善
上記改造工事を始めるに当たり、改造工事期間短縮の検討の一環として、二次系のナトリウムをすべてタンクへ抜き取り、一次系の1ループで炉内のナトリウムを循環させるという一次冷却系単独運転を検討しました。
一次冷却系単独運転の主な実施条件として次の二つが挙げられます。第一の条件は、冷却材であるナトリウムが循環する一次冷却系及び原子炉容器での放散熱が炉心崩壊熱を大きく上回ることであり、第二の条件は、一次系の予熱ヒータで炉内ナトリウム温度を200℃に保つことです。
第一の条件に関しては、一次冷却系での放散熱は約110〜160kWであり、炉心崩壊熱は解析値から21.2kW(図12-2)と算出されたことから、ポンプ入熱等を考慮しても明らかに炉心崩壊熱は放散熱より少ないことが分かりました。ここで、炉心崩壊熱の評価は直接測定する手段がないため、解析コードFPGS90を使用し、放散熱の評価にはHVAC法を用いました。HVAC法とは、換気空調設備の熱交換器出入口温度の試験データから求められる放散熱量に対し、熱交換器がカバーする部屋に対する設計上の比を使って、評価すべき箇所の一次系の放散熱を求めるものです。
第二の条件については、予熱ヒータの効率及び中間熱交換器からの放熱を考慮すると、通常温度設定のままの一次系の予熱ヒータのみで炉内ナトリウム温度を200℃に保つことが容易ではないため、一次冷却系単独運転に関与する換気空調設備による放散熱を抑制し、一次系の予熱ヒータの温度設定を変更することにより、一次系の予熱ヒータ投入量を増加させました。これらの検討及び措置により、一次冷却系単独運転を実施することができました。
一次冷却系単独運転の実施によって、目的であった工期短縮に加え、放散熱の抑制による、発電所内の消費電力量の削減になりました。