12-3 発電用原子炉の高燃焼度燃料の挙動解明を目指して

−照射済燃料用大気圧水カプセルの設計−

図12-5 NSRR原子炉本体立面図

図12-5 NSRR原子炉本体立面図

原子炉プールの底に設置された炉心に照射カプセルを挿入して照射実験を行います。

 

図12-6 X-IV型大気圧水カプセルの概略図

図12-6 X-IV型大気圧水カプセルの概略図

内部カプセルと外部容器からなる二重容器です。内部容器の中に水とともに燃料を装荷します。

NSRR(図12-5)は、反応度事故時の燃料挙動を解明する炉内実験のために建設された原子炉で、1975年6月に初臨界に達しています。NSRR実験は、未照射の原子炉燃料を実験対象として開始され、その成果は発電用原子炉の安全審査に役立てられています。近年、原子炉燃料の使用期間の長期化のために、燃焼の進んだ燃料に関する安全データが求められるようになり、現在は、高燃焼度燃料に関する実験が中心となっています。

NSRRではこれまで、未照射燃料や照射済燃料の実験を進めてくる中で、様々な実験条件にあわせて多くの照射カプセルを開発してきました。現在は18種類の照射カプセルが存在します。そのうち照射済燃料用大気圧水カプセル(X-IV型大気圧水カプセル、図12-6)を2006年に製作しました。

X-IV型大気圧水カプセルは照射済みの実験用燃料を使用することから、破損した実験用燃料からの核分裂生成物の放出を防止しなければなりません。そのため発電用原子炉の圧力容器相当の安全性が要求されますが、一方で、実験用燃料への中性子照射量を確保するために、できるだけカプセルの肉厚を薄くする必要があります。そこで、X-IV型大気圧水カプセルは、カプセルを内部カプセルと外部容器の二重容器にし、内部カプセルについては燃料付近の肉厚をできるだけ薄くし、より高い応力の発生する上部の肉厚を厚くすることで、万が一にも核分裂生成物がカプセルの外へ放出しないような強度と中性子照射量の確保の両立を図っています。なお、これまでは「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(告示501号)」に準じて強度評価を実施してきましたが、今回は最新の技術知見を反映した「日本機械学会 発電用原子力設備規格 設計・建設規格(JSMESNC1-2005)」を準用し、再度強度評価を行い十分な強度を有していることを改めて確認しました。

X-IV型大気圧水カプセルは、現在までにも数十体を製作しており、多くの実験に使用された実績があり、その研究成果は原子力発電所の設計や安全審査に反映されています。今後も反応度事故条件下での高燃焼度燃料のより正確な破損挙動の解明に協力するため、炉内実験を進めていきます。