図12-11 高速炉燃料集合体の概略図
図12-12 照射済燃料集合体の三次元X線CT画像
図12-13 燃料ピンの曲がり測定結果と解析値との比較
高速炉燃料集合体に装荷された燃料ピンは、高燃焼度化に伴い、熱湾曲,スペーサワイヤ(以下、「ワイヤ」)との相互作用,バンドル−ダクト相互作用(BDI:Bundle-Duct-Interaction)挙動により、照射中に曲がりが発生することが予測されます。集合体に装荷された状態での燃料ピンの曲がりは、外側にラッパ管があるため(図12-11)、これまで直接測定することはできませんでした。そこで私たちは照射した大型・長尺の高速炉燃料集合体についてラッパ管等を壊さずに燃料ピンの状態を検査するためにX線CT(Computed Tomography)技術を利用した照射後試験技術を確立し、照射した集合体の健全性の確認等を行ってきました(図12-12)。
本研究では、常陽で照射した炉心燃料集合体(最高燃焼度78GWd/t)のX線CT試験を軸方向20断面について行い、得られた横断面CT画像の画素データから燃料ピンの中心座標を定量化し、それらを軸方向に合成することによって燃料ピンの曲がりを測定しました(図12-13)。これらから、すべての燃料ピンでワイヤピッチに沿った軸方向の曲がりが明確に認められました。また、集合体の外周に装荷された燃料ピン(図中、C4及び04ピン)の曲がり傾向は、内部の燃料ピンと比較すると大きく、ラッパ管側へ変位していることが確認されました。
燃料ピンの曲がりは、熱湾曲,ワイヤとの相互作用,BDI挙動により発生することが予測されますが、このうちBDI挙動に起因した曲がりは、照射量が低いことから本集合体では発生していないと考えられます。そこで、熱湾曲及びワイヤとの相互作用による燃料ピン曲がりについて詳細に検討しました。
熱湾曲は、集合体の外周に装荷された燃料ピンにおいて、ラッパ管側とピン束側で冷却材温度が異なるため、熱膨張差によって生じる現象です。計算コードを利用した解析では、燃料ピンが炉心燃料部上端付近で約0.2mmラッパ管側に変位すると予測されました。
ワイヤとの相互作用による燃料ピンの曲がりは、巻き付けられているワイヤの張力により発生します。計算コードを利用した解析により、この曲がりは約0.16mm発生していると予測されました。
熱湾曲及びワイヤとの相互作用による燃料ピンの曲がり解析結果を合成し、図12-13に赤線で示します。X線CT試験による実測値と比較した結果、燃料ピン曲がりの傾向はほぼ一致しました。
非破壊試験で取得した横断面CT画像から、ラッパ管付きの状態における軸方向の燃料ピン曲がり挙動を定量的に明らかにするとともに、計算コードにより外周燃料ピンの曲がり挙動を再現することが可能となりました。これにより照射中やワイヤピッチの異なる燃料ピンの曲がり挙動等も把握できる可能性があることが示唆されました。