1-7 高速炉蒸気発生器伝熱管検査の高精度化

−ナトリウム付着の影響をシミュレーションで解決−

図1-19 多重周波数演算結果
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図1-19 多重周波数演算結果


ナトリウム冷却高速炉の蒸気発生器伝熱管は、水とナトリウムが伝熱管を隔てて隣接する高速炉特有の機器であり、ナトリウム・水反応事故を未然に防止するため、体積検査(渦電流探傷試験及び超音波探傷試験)を行い、伝熱管の健全性を定期的に確認することが求められています。

検査は、ナトリウムを抜き取った状態で伝熱管の内側に渦電流探傷(ECT)プローブを挿入して伝熱管の厚みの変化をコイルのインピーダンス変化として検知するものです。しかし、導電性物質であるナトリウムが伝熱管外表面に付着残留するとコイルのインピーダンスに影響を与え、伝熱管の健全性を評価する上で難しくなります。

一般的に探傷したECT信号の位相・振幅等の特徴量からキズ信号の抽出・識別を行う場合に、伝熱管を支持する支持板による信号を消去するフィルタリング手法として、多重周波数演算法が用いられますが、ナトリウム付着の影響は考慮されていません。

今回開発した多重周波数演算法には、支持板の信号だけでなく、付着ナトリウムの影響を抑制することができ、これまで識別が困難であったキズ信号だけを抽出することが可能となり、正確にキズを評価することができるようになりました。

開発した多重周波数演算法による結果は図1-19のようになり、ナトリウムの付着厚さの影響も受けずにキズの信号だけが明確に抽出されます。

このように渦電流探傷におけるシミュレーションを活用することで、蒸気発生器伝熱管検査のための有効なツールとして役立てられ、より一層の安全性向上に貢献していきます。


●参考文献
Mihalache, O. et al., Analysis of Defect Detection in Steam Generator Tubes of FBR, Under Support Plates and in the Presence of Sodium, Using Multi-frequency Eddy Currents Algorithm, Proceedings of 15th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE15), Nagoya, Japan, 2007, ICONE15-10211, in CD-ROM.