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1 次世代原子力システム研究開発

国家基幹技術FBRサイクルの早期実現に向けて−FaCTプロジェクトの開始−

図1-1 FBRサイクル実用化研究開発計画 〜FaCTプロジェクト〜

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図1-1 FBRサイクル実用化研究開発計画 〜FaCTプロジェクト〜


高速増殖炉(FBR)サイクルの適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を2015年頃に提示するため、原子力機構(旧サイクル機構)と電気事業者を中心としたオールジャパン体制で実施してきた「FBRサイクルの実用化戦略調査研究」が、2006年3月末に、そのフェーズIIを完了しました。その結果、酸化物燃料を用いたナトリウム冷却FBR、先進湿式法再処理及び簡素化ペレット法燃料製造の組合せが、経済性,安全性,資源有効利用性,環境負荷低減性,核拡散抵抗性の開発目標への適合性が高く、技術的実現性を含め総合的に最も優れた概念であると評価しました。

総合科学技術会議による第三期科学技術基本計画ではFBRサイクル技術が国家基幹技術の一つに選定され 、 「原子力政策大綱 」に示されたFBRサイクル開発の方向性に従い、2006年度には国レベルで今後のFBRサイクル技術の開発・実用化に関する議論が行われました。特に、文部科学省 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会では、 「FBRサイクルの実用化戦略調査研究」フェーズII成果の評価と今後のFBRサイクル技術の研究開発の進め方が議論され、現在の知見で実用施設として実現性が最も高く今後研究開発を特に進めるべきとして、私たちが最も優れた概念とした上記の組合せを主概念に選定し、革新的な技術の具体化に重点を置き、実用化に集中して研究開発を加速すべきとの方針が示されました。

これまで、FBRサイクル技術の開発については、将来のゴールを明確にするための戦略的な調査研究を中心に実施してきましたが、上記委員会による評価を踏まえた文部科学省の方針、更には、原子力委員会による「高速増殖炉サイクル技術の今後10年程度の間における研究開発に関する基本方針」に基づき、私たちは、「もんじゅ」を始めとした様々な核燃料サイクル研究開発の施設等を活用し、国際協力を積極的に進め、「実用化に集中した技術開発」に開発の段階を移すこととしました。あわせて、 「FBRサイクルの実用化戦略調査研究」を「FBRサイクル実用化研究開発」に名称を改め、英名を“Fast Reactor Cycle Technology Development ”プロジェクト、通称 “FaCT”プロジェクトとし、要素技術に裏打ちされた開発によって、「概念」を「事実」へと具体化していくとの想いを込めました。そして、FaCTプロジェクトの推進のため、研究開発組織を見直すとともに、理事長を本部長とするFBRサイクル技術開発推進本部会議を設置するなど、研究開発部門と研究開発拠点の連携を図り、FBRサイクルを着実に進めていく体制を整えました。

今後は、図1-1に示すように、要素技術開発等により革新的な技術の具体化を図るとともに、「もんじゅ」における開発成果を踏まえ、2015年度に実用施設・実証施設の概念設計と実用化までの研究開発計画を提示できるよう、集中的な研究開発を進めていきます。