図13-1 核不拡散科学技術センターにおける核不拡散研究活動
私たちは、国の核不拡散政策立案を支援するための政策調査研究と、国及び国際機関を支援するための核不拡散技術開発を二つの柱として、これに加えて世界の非核化の支援,自らの核物質管理の着実な実施と関連技術の開発,この分野の人材育成・人的貢献を行っています。
私たちの技術的な知見に基づき、核不拡散に係る政策研究として、「日本の核不拡散対応のモデル化」と「アジア地域の原子力平和利用の信頼性・透明性向上に関する研究」の2テーマを実施しています。
2007年度は、原子力平和利用の国内法担保,プルトニウム利用の透明性確保に関する政策,輸出管理,機微技術管理,核物質防護・核セキュリティ,保障措置といった個別の項目に関し、これまでの日本の核不拡散対応を整理するとともに、原子力発電導入が想定される東南アジア諸国を対象に、具体的な協力方策の検討を実施しました。また国への支援として、国際的に議論されている燃料供給保証及び核不拡散強化に関する調査・研究を実施しました。
2007年度は保障措置概念検討,環境試料分析技術開発,透明性向上・核拡散抵抗性などに関する検討を実施しました。
将来のFBRサイクルシステムの確立に向けて効果的・効率的な保障措置・計量管理が可能となるような先進的保障措置システムの開発を行っており、米国とのGNEP研究協力においても、次世代型の保障措置・核物質防護の共同研究についてワーキンググループレベルでの情報・意見交換を行いました。
未申告の原子力活動の検知を目的とする保障措置環境試料分析では、1μm未満のウラン粒子の検出が可能なフィッショントラック-表面電離型質量分析法を開発しました。
平和利用に関する信頼性向上・透明性向上の技術開発として、「常陽」における遠隔監視技術研究では、カラー高解像度の新規監視カメラの実証試験に着手しました。また、第4世代原子力システム(GEN IV)国際フォーラムなどに参画し、将来の核燃料サイクルシステムの核拡散抵抗性評価手法に関する研究を行いました。
世界の核軍縮・非核化を支援する技術開発として、ロシアの余剰核兵器解体に伴い発生するプルトニウムをMOXバイパック燃料として高速炉で燃焼処分するという方法を提案してきました。1999年から実施している共同研究の成果に基づいて成立性が示された高速炉による処分は、米露間でその有効性が認められ、2007年11月米露共同声明の発表により、ロシアのプルトニウムの処分はバイパック燃料により高速炉処分とすることが合意されました。
また、包括的核実験禁止条約(CTBT)に係る協力として、世界各国の放射性核種観測所で得られた試料の詳細分析を東海公認実験施設で継続実施するとともに、高崎観測所及び沖縄放射性核種観測所の暫定運用を開始しました。なお、CTBTが発効されるまでは暫定運用と扱われますが、一連の研究開発が完了し、本格運用の段階に入りました。また、世界中の観測所から得られるデータを解析評価するため、東海研究開発センター原子力科学研究所内に設置された国内データセンターでは、γ線スペクトル解析ソフトウェア,希ガス用β-γスペクトル解析ソフトウェア,大気輸送モデルを用いた放出源推定解析ソフトウェア及びデータベースの開発整備を行いました。
保障措置について、米国エネルギー省(DOE)との協力協定に基づき、各種技術開発プロジェクトを実施し、IAEA保障措置実施に技術的な貢献をしてきています。これら技術開発・応用経験を活かして内外の人材育成にも協力しています。
核物質防護について、核物質防護強化の一環としてカメラ映像,画像処理装置などで構成する侵入者自動監視システムの長期的な耐環境性能確認試験を行った結果、屋外で長期運用する場合の外乱要因と対策方法が判り、監視カメラの設置場所と効果的な検知ルールの設定などにより、不審者などの早期検知と自動監視ができる有効なシステムであることが検証できました。
核物質輸送について、原子力機構の各プロジェクトで検討している中長期の輸送計画を調査し、課題などを検討するとともに米国DOEとの試験研究炉使用済燃料輸送契約交渉を開始しました。またMOX原料の輸送容器開発のうち、原型容器を用いた施設取り合い、伝熱試験を実施しました。