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14 研究開発拠点における試験技術・施設等の開発

原子力機構では、これまで紹介しました研究開発テーマごとの研究開発部門・事業推進部門と、全国12箇所の地域に展開した研究開発拠点が連携して、幅広い研究開発を有機的に推進しています。

研究開発部門は関連する拠点において、各拠点の試験施設・設備を活用して目的の研究開発を進めています。研究開発拠点では、様々な試験施設・設備を管理運営するとともにその革新・向上を図り、多様な研究開発に必要な試験技術,管理技術,施設・設備の開発を実施しています。

本章では、こうした各研究開発拠点における最近の試験技術・施設等の開発について紹介します。

 

敦賀本部

「もんじゅ」は、ナトリウム漏えい対策工事などで改造した設備の性能及び機能を確認する「工事確認試験」を2007年8月に終え、引き続いてプラント全体の機能を確認する「プラント確認試験」を実施しています。2008年3月には「耐震設計審査指針」の改訂に伴う耐震安全性評価報告書を国へ提出し確認を受けています。また、ナトリウム漏えい検出器の誤警報を受け、全ての漏えい検出器の点検も実施しています。

「ふげん」は、使用済燃料の搬出、重水の回収・搬出を行っていましたが、2008年2月に廃止措置計画の認可を得て、廃止措置事業の先駆的役割を果たすため「原子炉廃止措置研究開発センター」に改組しました。廃止措置工事として、放射能レベルの比較的低い施設・設備及び汚染のない施設・設備の解体撤去を実施しています。

「原子炉廃止措置研究開発センター」発足(2008年2月)

「原子炉廃止措置研究開発センター」発足
(2008年2月)

   

東海研究開発センター原子力科学研究所

研究用原子炉JRR-3では、冷中性子ビームの増強を目指し、高性能減速材容器の開発を進めています。また、JRR-4では、医療照射(BNCT)利用の増加に対応するため、線量測定の効率化等に関する技術開発に取り組んでいます。タンデム加速器では、イオン源の高性能化のための技術開発を進めるとともに、放射線標準施設では、中性子測定器のエネルギー特性試験を行うための単色中性子校正場等の開発整備を継続しています。 

また、2007年度から開始した外部資金による技術開発では、JRR-4及びJRR-3での12インチシリコンインゴットの照射技術の開発を進めています。

単結晶シリコンに中性子を照射して、シリコンの同位元素31Siの核変換によりリン31Pを均一に添加することによって抵抗率のそろった半導体とし、高電圧・大電流を制御するサイリスタ、ビデオカメラのCCDなどに広く利用されています。
単結晶シリコンに中性子を照射して、シリコンの同位元素31Siの核変換によりリン31Pを均一に添加することによって抵抗率のそろった半導体とし、高電圧・大電流を制御するサイリスタ、ビデオカメラのCCDなどに広く利用されています。
   

東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所

再処理技術開発センターにて「ふげん」使用済MOX燃料(約3.1t)を用いた再処理試験、試験により発生する廃棄物の減容・安定化を図るためのガラス固化技術に係る研究開発を実施しました。また、プルトニウム燃料技術開発センターにて、将来のFBR実用化に向けた燃料製造技術開発試験,MOXペレットの熱伝導率及び融点等の物性測定を実施しました。

このほか、米国エネルギー省(DOE)と原子力機構の協力協定に基づき、アイダホ国立研究所(INL)との間で核燃料サイクル分野における人材育成を目的とした協力協定を大洗研究開発センターと連名で2008年4月に締結しました。今後はこの協力協定に基づき、研究所の相互訪問や研究交流,人材交流を行っていきます。

アイダホ国立研究所(INL)との協力協定締結式
アイダホ国立研究所(INL)との協力協定締結式
廣井博 大洗研究開発センター所長(左側)
David J. Hill 米国アイダホ国立研究所副所長(中央)
野村茂雄 核燃料サイクル工学研究所長(右側)

 

   

J-PARCセンター

J-PARC(大強度陽子加速器施設)では、3基の加速器施設や物質・生命科学実験施設(MLF)建屋の建設が終了し、陽子ビーム輸送のための試運転を進めております。中でも2007年10月には、初段加速器リニアックからの加速ビームを第2段加速器である3GeVシンクロトロンにより3GeVまで加速することに成功しました。更に、2008年5月22日には最終段加速器である50GeVシンクロトロンにおいて入射ビームの周回に成功するとともに、5月30日にはMLFでの陽子ビームの核破砕反応による中性子の発生に成功しました。2008年12月中にはビーム強度を更に上げ、MLFの施設供用開始を目指しています。

J-PARC内で建設中の中性子利用ビームライン

J-PARC内で建設中の中性子利用ビームライン
(撮影日2008年5月30日)

   

大洗研究開発センター

FBRサイクル実用化研究開発(FaCTプロジェクト)に係る試験として、「常陽」と照射後試験施設を用いたFBR用高燃焼度燃料やマイナーアクチニド含有燃料などの照射試験,水・ナトリウム試験施設を用いた試験を進めました。

「常陽」は、照射能力を従来の約4倍に向上させた高度化計画(MK-III)の完遂とこれを用いたFBRサイクルの研究成果が認められ、「平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」科学技術賞(研究部門)を受賞しました。材料試験炉(JMTR)は、2011年度の再稼動に向けて改修作業を開始しました。高温工学試験研究炉(HTTR)は、2007年5月に初めて連続30日間の定格運転(原子炉出口冷却材温度約850℃)を達成しました。また、IS法(高温ガス炉用)やハイブリッド法(高速炉用)による水素製造技術開発を進めました。

HTTRの中央制御室

HTTRの中央制御室

   

那珂核融合研究所

私たちは、核融合研究開発部門と一体となって核融合エネルギーの実用化を目指しています。炉心プラズマ研究や炉工学研究を行うとともに、フランスに建設される国際熱核融合実験炉(ITER)の支援・補完研究を行うため、欧州との協力の枠組み「幅広いアプローチ(BA)活動」の中で、JT-60の改修計画を進めています。

核融合研究開発の最前線を広く紹介するため、地元中学生や全国の高校生(スーパーサイエンスハイスクール)向けの施設見学会を度々実施するとともに、毎年10月には地元の皆さまを対象とした施設公開を行っています。

核融合プラズマの加熱装置に用いられる人工ダイヤモンドの性質に驚く中学生
核融合プラズマの加熱装置に用いられる人工ダイヤモンドの性質に驚く中学生
   

高崎量子応用研究所

私たちは、産業への応用を目指した新機能・環境調和材料,バイオ技術,量子ビーム分析の研究開発や材料・機器等の耐放射線性評価研究のため、4基のイオン加速器からなるイオン照射研究施設(TIARA)と電子・ガンマ線照射施設を機構内外の利用に供しています。2007年度は、半導体耐放射線性評価研究やマイクロビーム細胞照射研究の実験に、数100MeV級重イオンマイクロビームの供給を開始したとともに、10ヒット/秒以上の高速照準シングルイオンヒット技術の開発を進めました。

数100MeV級重イオンマイクロビーム形成用発散制限スリット

数100MeV級重イオンマイクロビーム形成用発散制限スリット

   

関西光科学研究所

木津地区においては、出力サブペタワットのレーザー発振,波長約10nmのX線レーザーの発振など先進的レーザーの研究を行い順調に進展しています。レーザーの利用研究では、準単色エネルギー電子の生成,高エネルギーイオン発生と医療応用への基礎研究を実施しています。

また、2007年科学技術振興調整費の「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」プログラムに提案した「『光医療産業バレー』拠点創出」が採択され、10月には特定部門「光医療研究連携センター」を設置し、けいはんな地域(京都,大阪,奈良の三府県にまたがり、21世紀を担う文化,学術,研究の新しい拠点)の産学連携の拠点として「光医療産業バレー」構築に向けた活動を開始しました。

播磨地区においては、SPring-8の放射光を利用して使用済核燃料の処理法の研究やウラン化合物の超伝導の研究など様々な研究を行うとともに、施設共用として4本の専用ビームラインを機構内外の利用に供しています。

木津地区高強度レーザー装置(J-KAREN)

木津地区高強度レーザー装置(J-KAREN)

   

幌延深地層研究センター

幌延深地層研究計画は、「深地層の研究施設」を活用した計画の一つであり、堆積岩を対象に深地層の研究を行っています。

2007年度の地下施設の建設については、立坑掘削に必要な櫓設備・坑口暖房設備などを整備し、立坑掘削は、換気立坑で掘削深度約161m、東立坑で掘削深度110mまで到達いたしました。また、立坑掘削に伴い発生する湧水量の推定及び湧水箇所の特定のため、換気立坑先行ボーリング調査を開始いたしました。地上施設については、PR施設が5月に竣工し、翌月の6月30日には幌延深地層研究センターPR施設「ゆめ地創館」として開館しました。同年12月には来館者1万人を達成しています。

2008年度の地下施設の建設については、前年度に引き続き、換気立坑,東立坑の掘削及び水平坑道の一部の掘削を実施するとともに、排水処理施設の増設を実施します。また、換気立坑近傍における先行ボーリング調査及び外部機関等との共同研究も継続して実施します。

一方、地上施設については、国外及び国内研究者の交流活動の拠点、地元の皆さまとの交流の場を目的とする国際交流施設(仮称)の建設工事に着手します。

PR施設の展望室から望む冬季の地下施設現場

PR施設の展望室から望む冬季の地下施設現場

   

東濃地科学センター

高レベル放射性廃棄物を安全に処分するための地層処分技術に関する研究開発のうち、主に結晶質岩(花崗岩)を対象とした深部地質環境の調査技術や工学技術の研究開発、地質環境の長期安定性に関する研究を実施しています。瑞浪超深地層研究所建設工事に関しては、2007年度において深度200mの水平坑道が完成し、立坑が深度231.2mまで到達しました。

研究の面は岐阜大学を始め、国内外の研究機関と研究協力等を推進しました。また、相互理解を深めるため、地元の皆さまを始めとして関係自治体などへの事業計画説明会を開催し、施設見学も積極的に受け入れました。更に高校生の体験学習などを受け入れ、地下の研究への興味を持っていただくよう努めました。

立坑坑底における地質調査

立坑坑底における地質調査

   

人形峠環境技術センター

私たちは、ウラン濃縮関連施設などの廃止措置技術開発として、七フッ化ヨウ素ガスによる乾式系統除染試験をウラン濃縮原型プラントの集合型遠心分離機カスケードを対象に実施してきました。2007年度は流量,流速など除染処理条件の最適化を図り、除染時間を運転当初の約1/2以下に短縮し、高い除去率を得て、処理を完了しました。引き続き単機型遠心分離機カスケードの除染に向けた準備を進めていきます。

このほか、製錬転換施設では、核燃料取扱施設としては国内初の本格的な施設解体に着手し、廃止措置エンジニアリングシステムへのデータベース提供を図ります。また、鉱山施設においても跡措置技術開発を進めていきます。

転換施設解体写真

転換施設解体写真

   

青森研究開発センター

2007年4月に青森事務所とむつ事業所を統合し、青森研究開発センターを設置し生まれ変わりました。

六ヶ所地区では、仏国で建設が進められているITER計画と並行し、欧州と日本の核融合の共同研究開発事業として実施される「幅広いアプローチ(BA)活動」の研究施設の建設を開始しました。

むつ地区では、クリアランス検認評価システム開発のための放射能関連データの収集,合理的な解体手法の検討など原子力船「むつ」原子炉施設の廃止措置並びに加速器質量分析装置(AMS)による極微量元素分析及び分析技術開発を継続して行っています。また、第3回むつ海洋環境科学シンポジウムを開催し地元の皆さまへの情報発信を行うとともに、第1回AMS利用報告会を開催しAMS利用者相互の情報交換を行いました。

幅広いアプローチ活動を地元の皆さまにより深くご理解いただくため建設予定地に看板を設置しました。(2007年6月)
幅広いアプローチ活動を地元の皆さまにより深くご理解いただくため建設予定地に看板を設置しました。(2007年6月)