14-1 原子力施設の残存放射能量を適切に評価

−「ふげん」の放射化量評価手法の適用性評価について−

図14-1 「ふげん」の放射化量の評価手法
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図14-1 「ふげん」の放射化量の評価手法

解析,測定などによって評価した中性子束を用いて放射化計算コード(ORIGEN)で放射化量を解析する手法を適用。放射化量解析に必要な中性子束データ、材料の元素組成データ及び水分測定データを原子炉運転中の段階から取得してきました。また放射化量についても実測し、解析値と比較することにより手法の妥当性を検証しています。

 

図14-2 放射化量の解析値と測定値との比較
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図14-2 放射化量の解析値と測定値との比較


廃止措置を実施していくに当たっては、施設内に残存する放射能量を可能な限り精度良く評価した上で、公衆の被ばく線量や放射性廃棄物の発生量などの廃止措置にかかわる安全性を評価し、適切な解体撤去方法・手順などに反映していくことが重要となります。

施設内の残存放射能量の評価は、原子炉運転中の中性子照射により炉心部など構造材が放射化して生成される放射化量の評価と、冷却材中などの腐食生成物などが炉心部で放射化されたものが機器・配管などの内面に付着する汚染量の評価があります。放射化量の評価においては、図14-1の「解析による評価」の流れに従い、多くの部分を解析によって評価することができますが、新型転換炉原型炉施設「ふげん」の場合、一般軽水炉と異なる複雑形状の圧力管型原子炉であり、原子炉廻りの中性子の挙動が複雑となっていることが予想されることから、中性子束分布を正確に把握した上で放射化量を解析し、その結果の妥当性を検証する必要があります。そこで「ふげん」では、「プラント調査」において元素組成などのデータや中性子束及び放射化量の実測値をできるだけ多く取得し、「解析による評価」との比較検証を行った上で評価に適用することとしました(図14-1)。

「ふげん」の場合、燃料のある炉心構造材領域と、その周囲にある遮へい体領域(鉄水遮へい体及び生体遮へい体コンクリート)に分けて中性子束の評価を行い、放射化量の解析を行います。

各領域の放射化量の実測に当たっては、炉心内構造材領域においては原子炉運転期間中に炉心内で一定期間照射された圧力管試験片を取り出し放射化量を測定し、遮へい体領域においては原子炉運転期間中に炉心廻りに多数設置した放射化箔を一定期間照射後回収し、その放射化量を測定するとともに、原子炉運転停止後に生体遮へい体のコンクリート試料を採取してその放射化量を測定しました。

解析値と測定値を比較検証した結果、いずれの場合においても解析値は測定値と同等あるいは測定値をやや保守側に予測する結果となり、本手法の妥当性を確認できました(図14-2)。

本手法は、「ふげん」の廃止措置計画(2008年2月12日認可取得)における残存放射能評価に適用しており、その結果を反映し、被ばく線量や廃棄物の発生量を適切に評価しています。また、本手法は、今後発生する中性子が影響する原子炉周囲の解体廃棄物のクリアランス評価にも適用することができます。