2-10 地下にもぐり、初期地圧の状態を探る

−水圧破砕法による三次元初期地圧測定−

図2-18 初期地圧測定位置とボーリング孔掘削状況

図2-18 初期地圧測定位置とボーリング孔掘削状況

 

図2-19 初期地圧の測定結果(主応力の下半球投影図)

図2-19 初期地圧の測定結果(主応力の下半球投影図)

 

図2-20 既往の初期地圧結果との比較
拡大図(230KB)

図2-20 既往の初期地圧結果との比較


高レベル放射性廃棄物の地層処分技術開発の一環として北海道幌延町で進めている幌延深地層研究計画は、2000年度から開始した地上からの調査研究段階が2005年度に終了し、現在、坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階に移行しています。
 地上からの調査研究段階では、幌延町北進地区に3km四方程度の領域を研究所設置地区とし、この領域及びその周辺を対象に地上物理探査,地質調査,ボーリング調査などを実施しました。一般に地下には、土壌や岩盤の自重のほかに地殻変動などによって初期地圧と呼ぶ応力が生じています。初期地圧は、地下構造物の設計を行う際に必要なことから、地上からのボーリング調査において研究所設置地区内に分布している水平面内(二次元)の初期地圧の評価を試みました。

坑道掘削(地下施設建設)時の調査段階においては、地上からのボーリング調査において評価した初期地圧の妥当性の確認ならびに更新を目標の一つとしています。そこで、図2-18に示す換気立坑の深度140mの小型試錐座において3本のボーリング孔を掘削し、水圧破砕法と呼ばれる方法で声問層を対象とした初期地圧の三次元評価を試みました。また、この3本のボーリング孔では、水圧破砕法から得られた型取りの記録よりボアホールブレイクアウトと考えられる孔壁の連続的な破壊が認められました。そこで、ボアホールブレイクアウトの情報による初期地圧の評価も試みました。

図2-19に初期地圧の測定結果を示します。初期地圧は、主応力σ1(最大主応力),σ2(中間主応力),σ3(最小主応力)で表され、上記した二つの方法で評価した主応力方向の分布には比較的良い一致が認められました。主応力σ1,σ2,σ3の値についても、それぞれ2.3,1.8, 1.2MPa及び2.4,2.3,1.3MPaとσ2に若干の相違はありますが、概ね整合的な結果が得られました。図2-20は、これまでに地上部から実施したボーリング孔(HDB-1,3,6,9,11孔)より得られた水平面内の初期地圧と今回得られた結果を示したもので、図2-20(d)は水平面内の主応力の値と深度の関係、図2-20(e)は、水平面内の最大主応力方向と深度の関係を示しています。この結果より、今回得られた水平面内の最大主応力の値は、その深度分の岩盤の重さにほぼ一致しているものの、既往の結果と比較するとわずかに小さな値となっています。また、水平面内の最大主応力の方向については、ほぼ東西方向であることが得られていましたが、今回の結果では、東西方向から反時計回りに25°, 43°の方向にある結果が得られました。これまでの傾向と異なる原因については、今後、声問層を対象とする深度140m水平坑道(小型試錐座を除く)及び稚内層を対象とする更に深い深度の水平坑道での初期地圧測定を順次実施し、データの蓄積を図り明らかにしていく予定です。