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2 地層処分技術に関する研究開発

地層処分の技術と信頼を支える研究開発

図2-1 地層処分システムの基本概念

図2-1 地層処分システムの基本概念

 

図2-2 原子力機構の研究開発施設
拡大図(249KB)

図2-2 原子力機構の研究開発施設


地層処分は、原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物を、何万年という超長期間にわたって人間の生活環境から隔離しておくための対策です。我が国では、まず処分する放射性物質をガラス原料に混ぜ、高温で溶かし合わせてガラス固化体とします。これを金属製のオーバーパックに封入した上で、地下300m以深の安定な岩盤内に粘土(緩衝材)で包み込んで埋設するのが地層処分です(図2-1)。現在、2035年頃の操業開始を目標に、実施主体である原子力発電環境整備機構が、全国の自治体に対して処分候補地の公募を行っているところです。

地層処分は、候補地の選定から処分場の建設・操業,閉鎖に至るまでに100年を要する長期事業であるため、国が責任を持って継続的に技術基盤を強化し、信頼を高めながら段階的に意思決定を図っていくことが重要です。そのような長期にわたる国家的な事業を技術的に支えていくため、私たちは、様々な観点からの研究開発を進めています。

まず、地層処分の舞台となる深地層を総合的に調べるため、花崗岩と堆積岩を対象とした二つの深地層の研究施設計画を進めています(図2-2)。既に、地上からの調査段階を終了し、2007年9月に地上からの調査に関する成果報告会を開催しました。現在、坑道を掘削しながら、地上からの調査技術やモデル化手法の妥当性を確認しています。また、深地層環境の長期的な安定性を評価するため、断層活動や火山活動などの天然現象に関する研究を併せて行っています(トピックス2-7, 2-8)。

一方、茨城県東海村では、人工バリアの長期性能や放射性物質の溶解・移行に関する実験データなどをもとに、深地層の研究施設で得られる情報も活用して、地層処分の工学技術や安全評価のための手法の高度化を図っています。2007年度には、オーバーパックの長期健全性を裏打ちするデータの整備(トピックス2-3)や安全評価のシナリオ構築支援ツールFepMatrixの公開(トピックス2-4)などを進めました。

また、このような研究開発成果に基づき、地層処分の安全性を支える様々な論拠や科学的知見などを知識ベースとして体系的に管理・継承していくため、知識管理システムの開発を進めています。2007年度までにシステムの設計を終了し、2008年度からシステム構築を開始しました(トピックス2-1)。

地層処分事業については、2008年4月に国の基本方針と計画が改定され、研究開発機関も深地層の研究施設の公開などを通じて国民との相互理解促進に貢献していくべきとの方針が明示されました。また、併せて処分地の選定に向けたスケジュールが変更されました。今後の研究開発については、このような事業の動向などを踏まえて最適化を図りながら、タイムリーに成果が反映できるよう、着実に進めていきます。