2-4 安全評価体系の現実的な処分環境への適用に向けて

−FepMatrixツールを用いた基盤情報の整理と展開−

図2-7 安全評価での情報の受渡しに関する概念とその例示
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図2-7 安全評価での情報の受渡しに関する概念とその例示


放射性廃棄物地層処分の安全評価で取り扱う特性や現象は多岐にわたり、地層処分システムの将来像を数10万年に及ぶ時間スケールと巨大な天然の母岩の持つ空間スケールで取り扱う必要があります。安全評価を行う上で、不確実性を適切に取り込むことが重要で、この検討は、多くの専門分野での現象の理解、理解に基づくモデル構築など、安全評価に至る複数の段階において行われます。そこで、安全評価に至る過程を判りやすく、かつ、追跡性を向上するための手法について検討しました。

取り扱う特性や現象は、熱的(T),水理学的(H),力学的(M),化学的(C)なものに大別でき、幾何形状(G)の時間変化とあわせて(以下、総称してTHMCGという)整理することが重要であると考えています。なぜならば、THMCGによる整理を介して、地質環境とそれに適用させた設計に基づく地層処分システムに生じると考えられる長期挙動や安全評価を具体化するためのバリア機能(安全機能と呼ぶ)についての取扱いを系統的に表すことができるからです。このように情報を整理することによって、評価すべき多くの現象についてそれらの相互の関係を踏まえたシナリオの検討が可能となります。この概念の有効性を確認するため、地層処分研究開発の第2次取りまとめの安全評価で設定されたレファレンスケースにかかわる安全評価の過程についてシナリオ解析ツールFepMatrixを用いて整理を試みました(https://www.jaea.go.jp/02/press2007/p07061901/index.html)。FepMatrixツールとは、膨大な数の特性や現象の相関を表形式で計算機上に構造的に整理するために開発した公開ツールです。これを用い第2次取りまとめでの評価において、地質環境条件,設計や懸念される現象の取扱いと安全評価への反映方法について系統的に整理することができました。

例えば、コンクリート支保が必要な岩盤においては、コンクリートからのアルカリ成分が化学環境に与える影響や懸念される現象について、この整理された情報をたどることによって、これまでの安全評価に対する変更点や追加点(例えば、図2-7の吹き出し記述)の抽出が容易となります。また、安全機能の定量的な評価に対する過度な安全側の設定や簡略化を排除する場合には、一連の情報の流れを安全機能からさかのぼることによって、より詳細に検討すべき現象や注目すべきシナリオが容易に抽出できることが分かりました。これによって今後の地質調査結果の更新や設計の変更を想定した場合の安全評価のシナリオ抽出や解析ケースの変更に関する見通しが得られました。