3-3 JT-60プラズマ映像データベースシステムを開発

−ITER-BA遠隔実験に向けたプラズマ映像データ創成配信技術−

図3-6 JT-60プラズマ映像データ

図3-6 JT-60プラズマ映像データ

JT-60プラズマ映像データは、プラズマ可視カメラ映像とプラズマ断面形状コンピュータグラフィックス(CG)映像を一体化したモニター映像と、プラズマ周辺磁場揺動信号を音声チャンネルに入力した画像データで構成されます。

 

図3-7 JT-60プラズマ映像データ創成配信の仕組み

図3-7 JT-60プラズマ映像データ創成配信の仕組み

JT-60プラズマ映像データは、実験の進行に従って出力されるタイミング信号を受信することによって自動的に記録され、2種類の異なる圧縮方式で圧縮されたのち、データベースとして格納されています。利用者は、LAN(ローカルエリアネットワーク)を介してデータベースから任意の放電の映像データを取得することができます。

プラズマ映像データは、JT-60実験放電の概要を把握する最も効率の良いデータといえます。大型モニターに表示されたプラズマ映像は、実験中ではリアルタイムでプラズマの変化を伝え、放電後においては放電ごとのプラズマの様子を再生し、実験運転に必要なプラズマ放電の把握や真空容器内の観察に貢献しています。本技術の導入により、JT-60の実験は画期的に効率良くかつ安全に行えるようになり、現在ではJT-60の実験を行う上でなくてはならないものとなっています。

このプラズマ映像データは、可視カメラによるプラズマ映像(図3-6右),磁場測定結果から物理法則に基づいて計算したプラズマ断面形状動画(図3-6左),磁場揺動から変換した音声信号,プラズマ電流波形,ポロイダル磁場コイルの電流波形を組み合わせたものであり、世界で初めてかつJT-60だけで実現しているユニークなものです。不思議な音色となって聞こえる音声信号は、JT-60の真空容器内壁に取り付けてある電磁気センサー(微小コイル)が検出した生の電圧信号を増幅したもので、プラズマの状態に応じて様々な変化をします。例えば、プラズマの回転速度が変わると音の高低が変化し、安定したプラズマでは雑音の少ない高い音を発生します。またしばしば音が低くなったり、雑音を多く含むようになったりするので、プラズマの状態変化が明確に把握できます。
 プラズマ映像データベースシステムは、アナログ映像信号として送られてくるプラズマ映像を2種類の異なる圧縮方式を用いてデジタル映像信号へ変換し格納しています。その一つは、高解像度でかつフルデジタル化にも対応する高い拡張性を持つ圧縮方式であるMPEG2方式であり、もう一つは映像ファイルの高速ネットワーク配信を目的に開発された低解像度・高ビットレートのMPEG4方式です。

プラズマ映像キャプチャーシステムは、実時間でMPEG2方式への変換・圧縮を実行し、放電完了直後に保存します。引き続いてMPEG2方式の映像ファイルをMPEG4方式の映像ファイルに変換し、MPEG2,4のどちらもプラズマ映像創成配信システムでデータベース化されています。また、このシステムは、データベースの更新の有無を監視し、常に最新の情報をブラウザを介して利用者に提供しています。

本システムは、汎用パソコンを利用して製作することで製作費を最小限に抑える工夫とともに、既存のネットワークを利用して拡張性の高いシステムとしています。大容量の映像データを効率良く取り扱う上での技術的課題については、大小異なる二つのデジタル映像圧縮方式を採用することで解決しました。更に、本システムはJT-60の実験シーケンスに連動し、放電ごとに自動的に一つのデータファイルを生成するシステムとしました。その結果、従来、波形で得ていたプラズマ情報を補完した上に「映像と音」ならではの感覚で捉える情報提供が可能となり、実験後の放電検索や実験概要の確認などが効率的にできるようになりました。

ITERやサテライトトカマク(JT-60SA)の遠隔実験を行うには、どのようなプラズマが生成されているかを、遠隔地においても現地と同様に的確に即座に把握する必要があります。このシステムは、実時間処理、データベース化においてその利便性に沢山の工夫が盛り込まれて実現されており、遠隔実験のキーテクノロジーとなります。