図6-1 先端基礎研究で実施する四つの研究分野と原子力機構内外との協力
原子力機構先端基礎研究センターでは、将来の原子力科学の萌芽となる未踏の研究分野を開拓し、新原理・新現象の発見や新物質の創製、さらには新技術の創出を目指しています。そのために、私たちが持つ高度な人的・物的資源を有効に活用し、ほかの研究機関では実施の困難な原子力に関する研究を進めること、国際レベルの創造性あふれる研究であること、萌芽的段階の研究を一人歩きできるまで育てること、更に、国の新しい科学技術基本計画に照らし、基礎研究の重視と応用・社会との接点に向けて独自の視点を持ち人材育成に留意することの4点を基本的な研究方針としています。
具体的には、加速器などの重イオンビームを利用し、超重元素の原子核などの構造や崩壊の研究、新元素や新核種の合成法及び超重元素の化学的性質の研究を行う超重元素核科学、ウラン・超ウラン化合物の高純度単結晶の育成と電子状態の研究及び中性子散乱,核磁気共鳴(NMR),ミュオンスピン回転(μSR)による超伝導物質などの磁気構造の解明を行うアクチノイド物質科学、超重力やナノ粒子ビーム非平衡場を用いた新物質の探索と高輝度陽電子ビームによる最表面物性研究を行う極限物質制御科学、生体モデルとしての超分子系の分子間相関を中性子超小角散乱や放射光X線により解明する研究及びウラン化合物又は放射線と細胞、生体分子との相互作用の解明や放射線の物理化学生物作用における基礎過程を解明する物質生命科学を実施しています(図6-1)。
これらの先端的な研究を推進していくために、原子力機構内の他部門との連携や国際的な研究協力を実施しています。また、黎明研究を実施して、原子力機構外から研究のアイデアを募り、先端研究に活用しています。