1-1 経済性を向上した実用FBRプラント概念

−革新技術の研究開発とプラント設計への着実な反映−

図1-2 我が国におけるFBRプラントの実用化ステップ

図1-2 我が国におけるFBRプラントの実用化ステップ

「常陽」,「もんじゅ」の設計・建設・運転経験をもとに、高い経済性,信頼性を実現させる革新技術を取り入れて、着実にFBRの実用化を目指します。

 

図1-3 建設コスト低減のアプローチ

図1-3 建設コスト低減のアプローチ

FBRの実用化のため、簡素な冷却系(2ループ,高クロム鋼を用いた配管短縮,1次系ポンプと中間熱交換器の合体)、コンパクトな原子炉容器などの革新技術を駆使し、ツインプラント構成や習熟効果を取り入れて、格段の建設コスト低減を追求します。

FaCTプロジェクトでは、保守・補修性,製作・建設性において有利なループ型炉の特長を活かし、将来の軽水炉に比肩し得る経済性を有する先進ループ型ナトリウム冷却高速炉(JSFR:Japan Sodium-cooled Fast Reactor)の設計研究と関連する研究開発を進めています。

図1-2に示すように、我が国は高速実験炉「常陽」及び高速増殖原型炉「もんじゅ」の設計・建設・運転を通じて蓄積した経験を活用し、かつ経済性,信頼性を向上させる革新技術のJSFRへの適用を図りながら、FBRの実用化を目指しています。

図1-3は建設コスト低減のアプローチを示しています。JSFRの設計では、大口径配管高流速条件を満たす2ループ構成として電気出力150万kWeを発生させ、配管を高クロム鋼製で短縮化するなどにより簡素な冷却系としています。従来、燃料交換の際に炉心上部機構が原子炉容器内を移動するために設けていた空間を削除するなどの工夫により原子炉容器もコンパクトにしています。これらの革新技術により物量削減を図っています。更に出力の増大化によるスケール効果,ツインプラント構成による設備の共有化,複数基建設による習熟効果などを重ねて、格段の建設コスト低減を目指しています。

安全性の向上は開発段階によらず常に要求され、JSFRにおいても、異常時には早期に原子炉を停止し確実に崩壊熱を除去するシステムを装備しています。加えて、受動的な安全機能のみでもこれらを達成し、炉心損傷事故に至らない革新技術、万が一の炉心損傷事故時においても、その影響を原子炉容器内で終息させる革新技術の開発にも取り組んでいます。ナトリウム漏えい対策を強化するための配管の二重化や、簡素で溶接点数が少なく、検査や保守・補修が容易な原子炉構造などにより信頼性の向上も追求しています。

これまで、コンパクトな原子炉容器内でナトリウムの高速流れが引き起こす様々な熱流動現象を解明しそのプラントへの影響を抑えるための試験研究などを行っています。燃料交換時に炉心上部機構を移動させる空間を削除するため炉心上部機構に設けた切込み部の中を動く燃料交換機の実規模試験や、原子炉構造物をナトリウム中で検査するための装置の開発なども進めており、得られた成果を着実に設計に反映してきています。

2050年頃のFBRの実用化に向け、今後も設計研究及び要素技術開発を着実に進めていきます。