図3-21 ITERダイバータ外側ターゲット
図3-22 性能評価試験用ダイバータ試験体
私たちはITER計画の実現に向けて、核融合炉の炉内機器のひとつであるITERダイバータ外側ターゲット(図3-21)の研究開発を進めてきました。ITERダイバータの調達の準備段階として、これまでの成果に基づき、性能評価試験用ダイバータ試験体(図3-22)を、産業界の協力を得て製作し、ITER機構が行った高熱負荷試験に世界で初めて成功しました。
ITERダイバータは、炉心プラズマの最も高い熱負荷に耐え得る強固な設計が求められます。この設計要求のハードルは高く、従来の工学機器では未経験の最大20MW/m2の高熱負荷に耐える構造が不可欠です。そのため、ITERの参加各極は、高温耐久性を有するダイバータの製作を達成すべく、研究開発を進めてきました。
私たちは、高熱負荷に耐え、純銅を超える高い熱伝導性を持った炭素繊維複合材に着目し、炭素繊維複合材製の表面保護タイルを銅合金製の冷却管に「ロウ付け」接合する構造の開発を行ってきました。しかし、この表面保護タイルは、冷却管の銅合金よりも熱膨張係数が小さいため、接合中に表面保護タイルが割れてしまうなど、冷却管との接合が困難でした。この問題の克服には、多孔質で脆い性質の炭素繊維複合材と銅合金製冷却管の組合せ寸法精度の管理が重要です。
そこで、ITER工学設計活動で得た知見に基づき、表面保護タイルと冷却管の間に柔らかい純銅製緩衝材を挟んで互いの熱膨張差を吸収するとともに、炭素繊維複合材の接合面にあらかじめチタンを塗布して金属化を図り、±5μmの組合せ寸法精度を達成して、接合不良を克服しました。
この技術を用いて製作した性能評価試験用ダイバータ試験体は、ITER機構により、ロシアのエフレモフ研究所で高熱負荷試験が行われました。その結果、ダイバータ調達に際し、受け入れ基準となる20MW/m2の熱負荷で1000回以上の耐久性能を達成しました。これにより現在、我が国は、ダイバータ調達極(日・欧・露)の中では初となる、実機ダイバータ製作に必要な技術能力の認定をITER機構から受けました。
この成果をもとに、私たちは、2009年度よりITERダイバータ調達の一環として、実規模プロトタイプの製作を実施する予定です。さらに、2011年度を目途に実機用ダイバータの量産及びITER機構への納入を開始する見通しです。