1-5 燃料集合体からの安定かつ確実な燃料ピンの分離技術

−FBR燃料集合体の機械式解体システムの開発−

図1-11 燃料集合体の解体手順

図1-11 燃料集合体の解体手順

六角形状のラッパ管の六面を切断後、ラッパ管を引き抜き、エントランスノズルとの固定部を切断することで燃料ピンを分離します。

 

図1-12 燃料集合体の一連の解体操作が可能な工学規模試験装置

図1-12 燃料集合体の一連の解体操作が可能な工学規模試験装置

燃料集合体の受入れから、解体後の燃料ピンを次のせん断工程まで引き渡すことが可能な試験装置を製作し、模擬燃料集合体を用いてその解体性能を評価しました。実際に導入する際にはこの装置に遠隔保守機能,崩壊熱の除去機能などを付加します。

FBRの燃料ピンは、六角形状のラッパ管の中に挿入されています。そのため、燃料ピンをせん断する前にラッパ管を解体し、内部の燃料ピンを取り出す必要があります。この解体技術には、厚さ数mmのステンレス鋼製ラッパ管や数100本に束ねられた燃料ピン束を切断する切断性能や切断部から約1mm下に位置する燃料ピンを損傷しないように切断する精度が求められます。さらに、使用済燃料から発生する崩壊熱や放射線の影響などを考慮しなければなりません。以上の点を考慮して、私たちは切断性能と切断精度を兼ね備えた機械式解体システムの開発を進めています。

燃料集合体の解体に使用する機械式切断工具としては、数多くの切断工具の種類の中から、切断性能と制御性に優れたCBN(Cubic Boron Nitride)砥石を解体に適した切断工具として選定しました。燃料集合体を解体するためには、図1-11に示すように、まず燃料ピンの下端部でラッパ管を周方向に切断し、ラッパ管を燃料ピン束から引き抜きます。なお、ここで、万が一、放射線の影響によりラッパ管や燃料ピンが変形し、引抜き操作が困難となる場合には、集合体の長手方向にスリットを入れる操作を行います。次に、燃料ピン束の端栓部を切断することで、燃料ピンを損傷することなくエントランスノズルと分離し、次のせん断工程に送ります。

これまでに、解体試験用の工学規模試験装置(図1-12)を設計・製作し、模擬燃料集合体を用いた解体システム試験を進めてきました。本システムには、切断操作の信頼性を向上させるために、切断工具の負荷に応じた切断速度の可変機構や燃料集合体の変形を考慮した自動計測機能が備えられています。それらの工学試験結果から、CBN砥石によるラッパ管の切断性能は良好であること、燃料ピンの損傷を抑えた切断が可能であることとともに、一連の解体操作が連続的に安定して実施可能であることを実証しました。

今後は、同時に開発を進めている機器の耐放射線性や4kWを超える燃料集合体の崩壊熱の除去性能、遠隔保守性等の評価結果を含めて総合的に評価し、実用施設への導入を目指した解体システムを構築していきます。

本研究は、エネルギー対策特別会計に基づく文部科学省からの受託事業として、日本原子力発電株式会社からの再委託で原子力機構が実施した平成21年度「燃料集合体の解体及び燃料ピンせん断技術の開発」の成果を含みます。