2-9 深地層に分布する堆積岩の変形・破壊挙動を探る

−室内試験に基づく堆積岩の力学特性評価−

 

図2-18 試験システム

図2-18 試験システム

岩石コアを三軸セルにセットした状況です。


図 2-19 試験結果の一例

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図2-19 試験結果の一例

応力・ひずみ・間隙水圧の挙動岩石に荷重が加わり、破壊とともに水圧が上昇します。

高レベル放射性廃棄物の地層処分場は、廃棄体・人工バリアの搬入・設置,坑道の換気などのために地下深部に多数の坑道を設ける必要があります。地下深部に坑道を掘削した場合、坑道を掘削する前に岩盤が分担していた荷重が取り除かれることになるため、坑道周辺の岩盤が坑道掘削前の荷重を負担することになります。そのため坑道周辺岩盤は損傷し、それに伴う変形が生じることが予想されます。したがって、地層処分場の合理的な設計・施工を行うためには、岩盤の変形・破壊挙動を理解する必要があります。

我が国に分布する第三紀以降の堆積岩は、諸外国と比べ、堆積年代が若いため、比較的軟弱で多孔質であることが特徴です。そのため、応力状態の変化に伴い、内部の微視的構造の容易な変形・破壊やそれに伴う水理学的な特性(間隙水圧や透水係数)の変化が予想されます。そこで私たちは、堆積岩の変形・破壊特性を明らかにするために、幌延深地層研究計画で実施されたボーリング調査から採取したコアを用いて複数の力学試験を実施しました。複数の応力状態下で力学試験を行い、更に微視的な構造の観察や水理学的な特性との関連性についての検討も行いました。

試験結果の例を図2-18,図2-19に示します。試験は、深層ボーリングで採取した岩石コアを小型の圧力セルにセットし、荷重を付与させ岩石を破壊させます。その際、コア内部で生じる間隙水圧やひずみが計測されるため、破壊に伴う変形挙動や間隙水圧の発生挙動も同時に把握することができます。図2-19には、幌延深地層研究所の浅部に分布する珪藻質泥岩(声問層)の結果を示しています。声問層は、微小な空隙を多数有する珪藻を主体とし構成されており、多孔質でありながら低透水性を有することが特徴です。この試験結果によると、拘束圧の増大に伴い、応力-ひずみの曲線形状が脆性的な破壊から延性的な破壊形態に移行しています。さらに、大きな拘束圧を作用させた場合、破壊後にもかかわらず間隙水圧が増加することが分かりました。これは、拘束圧の増大に伴い内部の微視的構造の損傷や収縮によってもたらされていることが推定されています。幌延深地層研究計画では、地下研究施設の建設に伴う坑道周辺の掘削影響を把握するための試験が実施されており、岩石コアを用いた室内試験結果は、掘削影響試験の試験結果の解釈やモデル化に情報を提供しています。