図3-29 加速器駆動型の核融合材料用中性子照射施設
図3-30 開発した微小試験片用破壊靭性試験装置
図3-31 IFMIF用照射後試験施設
日欧国際協力BA活動の下、国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)を進めています。このIFMIFは、ITERの次のステップである核融合原型炉に関係するものであり、核融合反応で生成した中性子を多量に受ける構造材料を含めたブランケットの詳細設計に必須なデータを取得する照射施設として位置付けられています。IFMIFは図3-29のようなリチウムと重水素の反応を利用した加速器駆動型の核融合材料用中性子照射施設です。照射スペースとしては約12.5程度がありますが、年間20dpa(displacement per atom(原子1個あたりの弾き出し))以上の高い損傷領域は0.5とスペースが限定されることから、それを評価す るための試験片は標準的な大きさのものより小さい試験片を用いる必要があります。このため微小試験片試験技術(SSTT:Small Specimen Test Technique or Technology)の開発を進めています。
現在、破壊靭性試験,疲労試験,き裂成長速度試験を中心とした微小試験片試験技術の研究開発を国内共同研究の下に実施しています。図3-30に非常に微小な約10mm角程度の大きさのコンパクトタイプの破壊靭性試験片を試験できる装置を示しますが、これ程小さな試験片用の破壊靭性試験装置は市販ではありません。そこで精密ボールネジによる駆動システムと試料の変位を高精度に測定できる変位計を備えるとともに、それらを連動的に制御させる装置を開発しました(図3-30)。これによりサブミクロンで高精度に変位制御と微小応力変化を導入できるようになりました。
一方、微小試験片試験技術に関する試験法のガイドラインについては、ASTMインターナショナル,ISO,社団法人日本機械学会などで整備がされていますが、核融合炉構造材料の第一候補材料である低放射化フェライト鋼においては脆さを評価する破壊靭性のマスターカーブ法と呼ばれる既存の試験法は、適切な評価ができないことが最近明らかになりつつあります。したがって、より一般的に適用できる改良した国際標準試験法の評価を進めています。更に微小試験片を装荷させる照射用試験モジュール開発や、微小試験片を用いてデータ取得していくためのIFMIF用照射後試験施設の工学設計(図3-31)を進め、これらを2013年6月までに工学設計などを完了させ、建設フェーズに移行する予定です。