表8-1 評価済核データライブラリの比較
図8-3 共分散(誤差)データの例
図8-4 高速炉体系での臨界解析の例
新しい評価済核データライブラリJENDL-4.0が完成し、公開されました。JENDL-4.0は原子力利用のための基礎的な中性子核反応データを収納しており、原子炉の臨界性や中性子遮へい,加速器の医学利用,宇宙の元素合成等科学と技術の様々な分野で利用されます。
JENDL-4.0には406種類の原子核や元素の核反応データが収納されています。JENDL-3.3が2002年に利用されてから利用者からのニーズや改善要望に応え、改良を進めてきました。特に、原子炉の高燃焼度化や廃棄物処理等で重要となるマイナーアクチノイドや核分裂生成物のデータを充実させるとともに、最近ニーズが高まっている共分散(誤差)データも充実させることができました。表8-1に欧米の評価済核データとJENDL-4.0の収納核種数などの比較を示します。収納核種数だけでなく、誤差データや原子炉の発熱評価等で重要なγ線のデータ等も充実しているのが分かります。
誤差データの例を図8-3に示します。これは235Uに中性子が入射した際の核分裂断面積(反応確率)の誤差をエネルギー間の相関を含め示しています。対角成分があるエネルギーにおける断面積の誤差(%)になります。対角成分から外れている部分はエネルギー間の相関を示しており、あるエネルギーでの断面積の変動が他のエネルギーでの変動に影響する程度を示しています。
また、JENDL-4.0の完成には、臨界性等多くの炉物理実験の解析結果を反映させ、従来の評価済核データより予測性能が良いことを確認しています。図8-4に高速炉体系における解析結果を示します。この図は、臨界性の指標である中性子実効増倍率の計算値と実験値の比を示したもので予測精度が良ければ1.0となるものです。従来のJENDL-3.3と比べJENDL-4.0を用いた計算結果の方が1.0に近い例が多く、予測精度が改善されていることが分かります。
JENDL-4.0はオープンライブラリとして、自由に利用することができます。核データ評価研究グループのWebページ(https://wwwndc.jaea.go.jp/index_J.html)からダウンロードできるほか、IAEAの核データセクションやOECD/NEAのデータバンクなどの国際機関からもダウンロードできます。このため、国内のみならず世界中の研究者や技術者たちが利用することが期待されます。