図12-29 NWASの機器構成
図12-30 NWASの外観・内側
人形峠環境技術センターでは核燃料施設で発生するウラン廃棄物測定のためのNDA(非破壊分析)装置(NWAS : Ningyo Waste Assay System)の開発を行っています。検出器は16本の中性子測定用ヘリウム-3比例計数管で、γ線測定用としても高純度Ge半導体検出器を併置しています(図12-29,図12-30)。
測定の原理は、U-238から放出される自発性核分裂中性子と、U-234(α,n)反応により生成する中性子を熱中性子化して測定するものです。特に、低原子番号元素のなかでもフッ素は特異的に中性子発生量が多いことが知られていますが、製錬転換施設はその化学プロセスに起因して発生するウラン廃棄物に付着するウランの化学形のほとんどがフッ化物であるため、この測定手法によれば多くの計数が得られ最適な方法といえます。更に中性子は高原子番号の物質に対しても高い透過率が得られるため、ウラン廃棄物の多数を占める鉄材に対しても高感度の測定が可能で、γ線測定法に比べ多くの利点を持っています。
また、中性子発生率はウラン濃縮度により異なるため、γ線エネルギースペクトルによりウラン濃縮度を求め、補正することとしています。
模擬廃棄物と標準ウラン粉末線源を用いたモックアップ試験により、NaFペレット・アルミナペレット・鉄材等のマトリックス・ウラン濃縮度ごとの較正定数(ウラン質量に対する中性子計数値)を求めました。今後更に 対象物を広げて、適用範囲を拡大していく予定です。モックアップ試験の結果、NWASの検出限界値はマトリックスにより変動しますが約10〜20 gUと評価され、計量管理で要求されるレベルの実用には十分耐えるものです。
製錬転換施設では本格的な解体が進んでおり、多数のウラン廃棄物ドラム缶が蓄積しています。現在、NaFペレット・アルミナペレット等の操業廃棄物、鉄材等の解体廃棄物の実ウラン廃棄物の測定に着手し、成功を収めているところです。
NWASの活躍の場は、核燃料物質の計量管理への適用、施設由来のウラン廃棄物ドラム缶の定量を予定していますが、更に精度向上を実現した上で適用範囲の拡大を目指していきます。
本研究は、米国ロスアラモス国立研究所(LANL)との共同研究の成果です。