1-2 炉心損傷事故に対する安全性を定量化する

−FBRにおける確率論的安全評価手法(レベル2PSA)の開発−

図1-4 FBRのレベル2PSAで評価対象となる事象と本研究で開発・整備した評価手法

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図1-4 FBRのレベル2PSAで評価対象となる事象と本研究で開発・整備した評価手法

未整備だった評価手法を新たに開発・整備し、FBRのレベル2PSAを実施するための標準的な技術基盤を世界で初めて提供しました。

 

図1-5 FBRのレベル2PSAにおけるイベントツリーの構築例(炉停止失敗を想定した遷移過程)

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図1-5 FBRのレベル2PSAにおけるイベントツリーの構築例(炉停止失敗を想定した遷移過程)

感度解析で摘出した支配現象を分岐点とするイベントツリーを構築し、再臨界等の重大な結果に至る要因を明確にしました。

FBRの安全性を示すには、「発生頻度は無視できるほど小さいが、発生を仮定すると重大な結果に至る事象」に対しても適切な対策が講じられており、そのリスク (発生頻度×結果の重大さ)が許容範囲にあることを定量的に評価する必要があります。このような評価には、炉心損傷から原子炉容器の破損による放射性物質の放散に至るまでの事象進展の不確かさを定量的に扱える確率論的安全評価(レベル2PSA)が有効です。FBRのレベル2PSAでは、軽水炉と異なるFBR特有の現象を踏まえて評価技術を開発・整備することが重要になります。

本研究では、私たちの既得成果(炉心損傷の初期段階の評価手法)に新たな成果を加えることにより、FBRのレベル2PSAを実施するための標準的な技術基盤を世界で初めて提供しました。ここで新たな開発対象としたテーマは図1-4に示すように、(1)炉心物質再配置に関する評価手法の開発、(2)格納容器内事象に関する評価手法の開発、及び(3)レベル2PSAのための技術的根拠の整備です。

(1)では、炉心残留物質の移行挙動がシミュレーションできる解析コード(MUTRANとSIMMER-LT)の開発と検証を実施し、炉心物質の長期的な再配置挙動を系統的に評価する手法を確立しました。(2)では、FBR特有の化学反応が扱える解析モデル(CORCONとVANESA)の開発と検証を実施し(検証に用いる試験データも新たに取得しました)、原子炉容器破損後の格納容器内事象を評価する手法を整備しました。(3)では、開発・整備した手法を用いた一連の感度解析によって支配現象を摘出し、図1-5のようなイベントツリーを構築して再臨界等の重大な結果に至る要因を明確にしました。併せて、事象進展の分岐を定量的に判断するためのデータベースも整備しました。以上により、FBRのレベル2PSAが実施可能になっただけでなく、将来のFBRに導入される様々な革新技術の有効性も確認できるようになりました。

本研究は、文部科学省からの受託事業「炉心損傷評価技術(レベル2PSA)の開発」の成果です。