図1-6 自然循環の原理
図1-7 自然循環時の炉心高温点評価手法
図1-8 炉心流量再配分効果
図1-9 冷却材最高温度の評価結果(外部電源喪失事象)
原子炉停止後の崩壊熱(定格の5%程度)は時間の経過とともに減少しますが、停止後の原子炉を健全に保つためには、炉心に冷却材を循環させ、この熱を確実に除去することが重要です。
ナトリウム冷却FBRでは、冷却材に使用しているナトリウムの沸点が高く、原子炉出入口温度差を大きく設計できるため、熱交換器との高低差があれば、電源を必要とするポンプがなくても冷却材がその密度差だけで系統内を循環します(自然循環)(図1-6)。高速実験炉「常陽」や高速増殖原型炉「もんじゅ」は、原子炉停止後にポンプが万が一動かない場合でも、この自然循環する冷却材で炉心から崩壊熱を除去できるよう作られています。また、現在開発中の次世代高速炉JSFRでは、この自然循環による崩壊熱除去能力をより積極的に設計に取 り入れた完全自然循環式崩壊熱除去系を採用しています。
崩壊熱除去時の炉心健全性は、諸々の不確かさを保守側に加味した炉心冷却材最高温度(炉心高温点)で評価できますが、自然循環時は炉心内の冷却材流量と温度の分布が動的に変化するため、従来の強制循環を用いたシステムのように保守側となる不確かさの条件をあらかじめ仮定することができません。そこで、自然循環時の炉心高温点評価手法(図1-7)を開発しました。これにより、自然循環時の不確かさを適切に考慮した炉心高温点が評価できるようになりました。また、「炉心流量再配分」(図1-8)等の効果により強制循環時に比べて炉心の最高温度が下がる現象も評価に考慮できるようになりました。図1-9は冷却材最高温度を評価した結果です。従来の手法をそのまま自然循環時にあてはめた場合に比べて、2次ピーク時で30 ℃程度合理化されていることが分かります。本評価手法は、このような自然の力を取り入れたより安全で安心できる原子炉の開発に反映していきます。
本研究は、エネルギー対策特別会計に基づく文部科学省から三菱FBRシステムズ株式会社への委託事業「過渡時の自然循環による除熱特性解析手法の開発」の一部として原子力機構が再委託で実施した「ナトリウム試験及び炉心高温点評価」の成果です。