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1 次世代原子力システム研究開発

FBRサイクルの実用化に向けて

図1-1 FBRサイクルの実用化に向けた研究開発の概要
拡大図(263KB)

図1-1 FBRサイクルの実用化に向けた研究開発の概要

将来の他のエネルギー技術よりも安全性,経済性,環境保全,資源有効利用, 核拡散抵抗性等に優れた高速増殖炉(FBR)サイクルの実用化を目指し、その性能目標達成に係る革新技術の要素技術開発と設計研究等を進めています。

私たちは、高速増殖炉(FBR)サイクルの実用化に向けて、「高速増殖炉サイクル実用化研究開発」(FaCTプロジェクト)及び高速増殖原型炉「もんじゅ」を用いた研究開発等を推進しています(図1-1)。

FaCTプロジェクトでは、酸化物燃料を用いたナトリウム冷却FBR、簡素化ペレット法燃料製造及び先進湿式法再処理を組み合わせた概念を主な対象として、 将来の電源が有すべき性能目標を達成するための革新技術の要素技術開発と設計研究を進めています。2010年度には革新技術の採用可能性を判断し、 第一段階を完了しました。また、「もんじゅ」の試運転を再開し、炉心確認試験を完了しました。本章で紹介する各トピックスのテーマは以下のとおりです。

 

世界共通の次世代炉(第四世代炉)の安全設計クライテリアを構築すべく、多国間協力の下でその安全設計概念を示しました(トピックス1-1)。そして、仮想的な炉心損傷事故の発生やその影響を定量的に評価できる手法を開発し(トピックス1-2)、ポンプ電源喪失時の自然循環炉心冷却システムの評価方法を構築しました(トピックス1-3)。また、「もんじゅ」 を対象にアクシデントマネジメントの実現可能性を示しました(トピックス1-4)。基盤技術開発では、実機材料のデータを用いてプラント構造材料健全性評価上の課題を同定できました(トピックス1-5)。また、安全性と経済性を両立する鋼板コンクリート構造格納容器の成立性を見通しました(トピックス1-6)。「もんじゅ」炉心確認試験結果を用いて核データの信頼性が高いことを示しました(トピックス1-7)。

燃料製造の研究開発では、混合酸化物燃料の原料粉をマイクロ波加熱法で量産する条件を示しました(トピックス1-8)。また、燃料長寿命化のため、次世代 燃料被覆管の照射健全性を確認するとともに(トピックス1-9)、被覆管の内面腐食防止に余剰酸素の吸収材を使用する方法を見通しました(トピックス1-10)。再処理技術の研究開発では、工程操作の効率化の予備検討に資するため、実燃料を用いた試験経験を踏まえた溶解シミュレーションコードを開発しました(トピックス1-11)。一方、金属燃料の乾式再処理について、燃料溶解効率化の課題を摘出しました(トピックス1-12)。さらに、FBRサイクル導入期を目指した新抽出プロセス構築のための試験研究を行っています(トピックス1-13)。