1-11 湿式再処理における燃料溶解の効率化に向けて

−高速炉燃料再処理向け溶解シミュレーションコードの開発−

 

図1-28 回転ドラム型連続溶解槽の概要

拡大図(141KB)

図1-28 回転ドラム型連続溶解槽の概要

ステージ1に投入された燃料せん断片は、ドラムの揺動により所定時間攪拌されたあと、ドラムの回転により次のステージに移送されます。 一方、ステージ8に連続的に供給される硝酸は、ステージ間のオーバーフロー孔を通してステージ1へと流れます。燃料せん断片と硝酸との向流接触により燃料の溶解反応が進行し、連続的に溶解液が得られるとともに、未溶解物はドラムの回転の際に排出されます。なお、溶液温度を維持するため外部からの加熱を行います。

 

図1-29 高速炉燃料溶解試験(非連続(バッチ)試験)結果及びシミュレーション結果

図1-29 高速炉燃料溶解試験(非連続(バッチ)試験)結果及びシミュレーション結果

使用済高速炉燃料を対象とした溶解試験結果との比較により、非連続(バッチ)溶解試験における燃料の溶解挙動の予測も可能であることを確認しました。

 

図1-30 回転ドラム型連続溶解槽によるMOX燃料溶解のシミュレーション結果

図1-30 回転ドラム型連続溶解槽によるMOX燃料溶解のシミュレーション結果

1時間あたりにMOX燃料を約20 kg溶解する際に必要となる 溶解条件を、溶解液中のHM(=U+Pu)濃度と硝酸濃度の変化等を計算・評価することにより、明らかとしました。

高速炉より発生する使用済燃料の再処理方法として、安全性や核不拡散性を高めるとともに環境への負荷低減を図った先進湿式再処理法の開発を進めています。先進湿式再処理法ではPu富化度が高く臨界安全上の制約が大きい高速炉の燃料を安全にかつ高処理能力で溶解するために、中心軸に中性子吸収体を有する回転ドラム型の連続溶解槽を採用しています。回転ドラム型連続溶解槽では内部が螺旋構造からなる長さ数mの回転ドラムの一端にせん断した使用済燃料を受け入れ、他端から硝酸を連続供給して燃料と向流接触させるとともにドラムを揺動及び回転させることにより燃料の溶解と未溶解物(ハル(被覆管),ワイヤ)の排出を効率良く行うことができます(図1-28)。このような回転ドラム型連続溶解槽を用いた溶解工程において安定で効率的な溶解条件を構築するため、溶解槽内における使用済燃料の溶解挙動を予測する溶解シミュレーションコードを開発しました。

開発したシミュレーションコードでは、(1)高Pu富化度の高速炉燃料(MOX燃料)が硝酸へ溶解する化学反応について反応速度や物質収支を計算する溶解モデル(2)溶解槽内のステージ間における液体及び固体成分の移動量を計算する物質移動モデル (3)溶解反応に伴う反応熱や溶解槽外部からのヒーティングパネルによる加熱を考慮した熱収支計算を行う熱収支モデルの三つのモデルにより、溶解槽内において同時に発生する溶解反応、溶液や固体の移動及び熱の出入の解析を行います。また、本コードでは、多段の解析のみならず、溶解槽のステージ数を1とすることで、非連続(バッチ)と同様の環境を表現することができ、その溶解挙動の予測も可能となります(図1-29)。

本コードを用いた解析により、回転ドラム型連続溶解槽によるUO2ペレットの溶解試験結果を精度良く再現できることを確認するとともに、MOX燃料を安定して溶解するために必要となる硝酸濃度やその供給流量等の溶解条件を検討・構築することが可能となりました(図1-30)。今後、シミュレーション結果の検証やその精度向上を図りつつ、本シミュレーションコードを活用して、燃料溶解の効率化を進めていきます。