図1-31 電解精製工程における電解処理の概念
図1-32 電解前のU-Pu-Zr合金の外観
図1-33 電解後の陽極の断面
FBRサイクルにおいて、金属燃料FBRは高い増殖率や炉内装荷プルトニウム(Pu)量低減などに特徴を有し、次世代燃料サイクル候補技術のひとつとして金属電解法乾式再処理とともに開発を進めています。
金属電解法乾式再処理では、使用済燃料を陽極として電解精製することでウラン(U)やPu等の超ウラン元素(TRU)を溶解しながらもう一方の電極である陰極に回収し、核分裂生成物(FP)等の不純物を分離・除去します。図1-31に電解精製工程でUやTRUを回収する概念を示します。電解質には、500 ℃の溶融塩(共晶組成のLiCl-KCl)を用い、細かくせん断した使用済金属燃料を装荷したバスケットを陽極とします。陰極にはUを選択的に回収するための鉄製の固体陰極とTRUを一括回収するための金属カドミウム(Cd)をルツボに入れて融解させた液体陰極の二種類を使います。陽極の使用済金属燃料に含まれるUとTRUは、電解により溶融塩中に溶解し、固体陰極にUが金属として析出します。また液体陰極を使うことでUとTRUの析出電位が近接する傾向を利用して、これらを一括してCd中に回収します。
次世代の高速増殖炉燃料として検討が進められている金属燃料には、融点と強度を高めるためにU-Puにジルコニウム(Zr)金属を加えた合金が用いられます。使用済燃料に含まれるZrがUやTRUとともに陽極から溶解すると、UやTRUの析出反応や電解後の塩からのFP抽出反応に悪影響を及ぼすことが予想されます。このため、できる限りZrは溶解させずにUとTRUのみを溶解する条件を見いだすことが重要となります。
高レベル放射性物質研究施設では、財団法人電力中央研究所との共同研究としてアルゴン雰囲気グローブボックス設備でU-Pu-Zr合金を用いた電解実験を行っています。図1-32に、陽極として使用したU-Pu-Zr合金の外観を示します。Zrが陽極から溶解する電位はUが溶解する電位と離れていることから、陽極の電位を制御しながら電解を行いました。図1-33に電解後のU-Pu-Zr合金の断面を示します。電解により外周部からUやPuが選択的に溶解したことにより、Zrのみをスポンジ状に陽極に残留させることに成功しました。U ,Puが溶解したあとの空隙には、溶融塩が浸入しており、外径の変化はありませんでした。陽極の残留物を分析した結果、Uの99.6%以上、Puの99.9%以上が溶解したことを確認しました。今後は、TRUとFPとの分離挙動などのデータを蓄積し、更に優れた電解制御手法を開発していく予定です。