1-8 電磁波を制御してむらなく無駄なくMOX原料粉を作る

−高効率マイクロ波加熱方式の研究−

図1-20 円筒型オーブン内の電界分布

図1-20 円筒型オーブン内の電界分布

円偏波を入射した場合の円筒型オーブン内の電界分布は直線偏波よりも強度差が低減されており、マイクロ波加熱の均一性が向上していることが分かります。

 

図1-21 Pu-U硝酸塩混合系モデルの水平面の吸収電力分布

図1-21 Pu-U硝酸塩混合系モデルの水平面の吸収電力分布

固体状態のPu-U硝酸塩混合系モデルに対してマイクロ波を 照射した場合、底面,中心断面及び上面のいずれの面においても円偏波の方が直線偏波よりも均一な吸収電力分布となっており、加熱むらが低減されていることが分かります。

 

図1-22 量産型マイクロ波加熱装置

図1-22 量産型マイクロ波加熱装置

出力3 kWのマイクロ波発振器(マグネトロン)から発生したマイクロ波が導波管を伝搬して円筒型オーブンに給電され、溶液を加熱します。マイクロ波自動整合器を用いることにより加熱効率の向上を図っています。

FBR用MOX燃料製造工程では、再処理工程で回収されたPu-U硝酸塩混合溶液(Pu富化度調整済)をマイクロ波(電磁波)により加熱し、溶液中の水,硝酸を蒸発させ、MOX原料粉末としての脱硝体を得ています。

マイクロ波加熱時に、加熱むらを低減するためにターンテーブルが使用されていますが、設置部のスリット,溝部に電流が集中することによる熱損失及び軸受け部における熱伝導によりマイクロ波の利用効率が低下します。マイクロ波加熱の効率性を向上するためにはオーブン構造を合理化する必要があります。合理化及び高効率化のために、新たに円偏波を用いる方法が考えられます。円偏波は互いに直交する90°位相のずれた二つの直線偏波の合成波であり、電界分布が均一化される特性を有します。マイクロ波の偏波面を制御することにより、オーブン構造及び機器が簡素化できるため、マイクロ波の損失を低減することができ、高効率化につながることが期待されます。

円偏波を適用した場合のマイクロ波の挙動や加熱特性を評価するため、円形導波管を有する円筒型オーブンのシミュレーションによる電磁場解析を行いました。入力マイクロ波条件として、周波数2.45 GHz、出力1 kWを設定し、FDTD法(時間領域差分法)によるマイクロ波特性の解析及び被加熱物の評価を実施しました。

直線偏波及び円偏波のマイクロ波を円筒型オーブンへ給電した際の電界分布の解析結果を図1-20、固体状態のPu-U硝酸塩混合系モデルの水平面の吸収電力分布を図1-21に示します。円偏波を使用した場合の電界分布とPu-U硝酸塩混合系モデルの吸収電力の分布では、直線偏波と比較して強度差が低減しており、マイクロ波加熱時の均一性が向上していることが明らかとなりました。

シミュレーションの結果から、マイクロ波の偏波面を制御することにより、加熱の均一性及び効率性を向上させることが期待されます。図1-22の量産型マイクロ波加熱装置では、直線偏波のマイクロ波を利用していますが、今後は実機を用いた円偏波発生状態の測定及び溶液が均一に加熱されていることを確認するための実証実験を進めていきます。