文献調査,概要調査,精密調査の順により詳細な調査が段階的に行われる地層処分のサイト特性調査では、深地層の研究施設などの現場における実体験で蓄積されてきた、様々な知識を活用できるようにすることが必要になります。これらの「知識」は、データベース,文献,ソフトウェアなどの「形式知」だけでなく、専門家の頭の中に蓄えられている経験 ・ノウハウなどの「暗黙知」まで、多岐にわたります。このうち、「暗黙知」に関しては、これまで現場での協働作業を通じて、親方から弟子に、あるいは一子伝承といった限られた範囲の人々の中で行われてきました。これらをより多くの若い技術者や次の世代に効率的に伝承していくためには、これまでの専門家が行ってきた判断のルールや失敗とその対処の事例などの「暗黙知」を可能な限り「形式知」にするとともに、継続的に「形式知化した暗黙知」を更新していくことが必要となります。
そのため、これまで専門家の頭の中に蓄積されてきた地質環境調査の計画立案,実施,評価の流れとその流れにおける専門家の判断のルールを表現する手法(ルールベース化:作業の流れを、If条件then帰結の形式で整理していったもの)を構築しました。また、ルールベースで表すことが難しい失敗経験の事例をデータベース化する手法(事例ベース化)を構築しました。これらルールベースや事例ベースは、IT技術者でなくても、更新用のインターフェイスを使って、各々の専門家が知識を入力したり、変更したりすることができるようになります。
これらの方法を合わせて、例えば、水質形成プロセスのモデル化を支援するエキスパートシステムなどを構築してきています(図2-3)。今後、これら個々のエキスパートシステムを統合し、概要調査の計画立案,実施,評価を支援する次世代型サイト特性調査情報統合システムを開発します。
本研究は、経済産業省からの委託事業平成20〜21年度「地質環境総合評価技術高度化開発」の成果の一部です。