2-8 立坑掘削に伴う岩盤挙動の解明

−堆積軟岩の岩盤挙動を支配する割れ目系−

図2-19 幌延深地層研究所の立坑(換気立坑)の割れ目観察結果

図2-19 幌延深地層研究所の立坑(換気立坑)の割れ目観察結果

立坑は円形ですので、南で分け展開したものです。実線で示しているものが割れ目です。割れ目はそれほど連続していませんが、立坑の壁面には多くの割れ目が認められます。

 

図2-20 立坑の収縮と応力のイメージ(収縮量を200倍程度に拡大して表示)

図2-20 立坑の収縮と応力のイメージ(収縮量を200倍程度に拡大して表示)

立坑の収縮量を強調していますが、収縮は北北東−南南西方向が最大で、西北西−東南東方向が最小です。これらの方向は、現在の応力の方向ではなく、割れ目を形成させた過去の応力の方向とおおむね一致しています。

幌延深地層研究所では、堆積岩を対象とし、立坑や水平坑道などの地下施設の建設を伴う研究開発を行っています。地下施設は、2010年度までに深度250 mまで掘削しています。地下を掘削すると、地圧によって地下施設の収縮という岩盤挙動が生じますので、その性質や度合いを調べることはとても重要なことです。

岩盤は岩石と割れ目の集合体です。岩盤は岩石の固さの度合いにより、硬岩と軟岩に区分されており、坑道掘削に伴う岩盤の挙動もそれぞれ異なると考えられています。硬岩では割れ目などの不連続構造が岩盤の挙動を支配すると考えられているのに対して、軟岩では割れ目よりも岩石の弾性が卓越すると考えられています。つまり、軟岩では現在の応力の方向が岩盤の挙動を支配すると考えられます。幌延深地層研究所で掘削している堆積岩は、軟岩に分類されます。これまでの現在の応力の測定結果から、地下施設建設中周辺の岩盤には、東西方向に圧縮する応力がかかっている結果が得られています。そのため、建設中の立坑は、東西方向に収縮することが予想されます。しかし、立坑の収縮を測定したところ北北東-南南西方向が最も収縮しており、西北西-東南東方向が最小の収縮方向でした。立坑では、多くの割れ目が認められますので(図2-19)、この割れ目が岩盤挙動に影響を与えている可能性があります。そこで、岩盤の挙動が割れ目系を使って生じた場合、その移動しやすい方向を示す可能性のある割れ目を形成した過去の応力について調べてみました。その結果、割れ目を形成させた水平での過去の応力の最大方向は北北東-南南西方向で、最小は西北西-東南東方向でした。この方向は立坑の収縮の最大と最小にそれぞれ一致しています(図2-20)。つまり、立坑の岩盤は割れ目系に支配されて収縮していることが分かりました。割れ目系を形成させた応力は、立坑などの地下施設を建設する前に行うボーリング調査によって得られる割れ目系からも推測できます。よって、地下施設を建設する前に、岩盤の挙動を推測し、より効率的な建設に役立つと考えられます。今後は、もともと岩盤中に分布する割れ目だけでなく、掘削によって新しくできる割れ目について、その性質や成因を詳しく調べていきたいと思います。