図9-2 評価式の適用性の検証の流れ
図9-3 システムによる計算結果と実績データとの比較
原子力機構は、多くの原子力施設を有しています。これらの施設は、いずれその使命を終え、廃止措置段階に入ります。原子力機構では、これらの施設の効率的な廃止措置計画を作成するために、管理データ評価システムの開発を進めています。
このシステムは、設備・機器の解体工事の手順や物量データを用いて、解体工事に必要な人工数や発生する廃棄物量等の管理データの予測ができます。
現在、本システムで管理データを算出する際には、小型の発電用原子炉施設(JPDR)の廃止措置の実績データから作成した評価式(既存評価式)を使用しています。このため、システムを様々な原子力施設の廃止措置に利用するためには、施設の種類や規模等の特徴が変わっても評価式が適用できることを確認する必要があります。その一環として、「ふげん」の廃止措置の実績データを基に、既存評価式の適用性を検証しています。
「ふげん」(55.7万kWt)は中型の発電用原子炉施設で、JPDR(9万kWt)の6.2倍の熱出力を持っており、施設は大型化していますがタービン系の構造はJPDRと同じです。このため、図9-2のように、「ふげん」で得られる実績データと既存評価式での計算結果との比較から、施設規模に対する管理データの影響を知ることができます。
既存評価式の適用性を検証する第1段階として、2008年度の解体工事の人工数の実績データを、既存評価式での計算結果と比較しました。その結果、図9-3のように、計算結果は実績データの73%と大きな誤差があり、既存評価式の適用が難しいことを確認しました。
今後の「ふげん」での解体工事を適切に予測できるようにするために、JPDRと「ふげん」の解体工事を比較分析して違いを検討しました。その結果、(1)準備・後処理工程では、JPDRではほとんどない大型の工事規模があったこと、(2)解体工程では、作業内容が違うことが大きく影響を与えていたため、「ふげん」の解体工事に適用できるように、(3)施設の規模に対応する工事規模の大型化を考慮できる新規評価式、(4)作業内容を考慮できる新規評価式をそれぞれ構築しました。検証のために新規評価式で再計算すると、図9-3のように、計算結果は実績データの101%とその差を大きく改善することができました。
他の施設についても、同様の検証と施設の特徴を考慮した改良を進めることで、様々な原子力施設に広く適用するようにしていく予定です。