図9-1 バックエンド対策の全体概要
原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理処分対策(バックエンド対策)は、原子力機構にとって大変重要なミッションのひとつです。原子力機構は、原子力機構の他、大学,民間等の研究施設等から発生する低レベル放射性廃棄物(研究施設等廃棄物)の埋設処分を行う実施主体として、埋設処分業務を進めるとともに、廃棄物の発生から最終処分までに関連する技術開発を総合的に進めています。
原子力施設の廃止措置では、廃止措置計画立案を支援する廃止措置エンジニアリングシステム並びに放射性物質として扱う必要のない廃棄物の安全なクリアランスに向けた検認評価システムの開発を行い、新型転換炉ふげん発電所(「ふげん」)や原子力科学研究所等の実施設への適用評価を進めています。
廃止措置エンジニアリングシステムの開発の一環として、「ふげん」の廃止措置を対象にシステムの適用性検討を行い、この中で、既存の予測評価式を改良した結果、作業員人工数の予測結果は実測値と良く一致することを確認しました(トピックス9-1)。
放射性廃棄物の処理処分においては、その費用を低減することや処分時の安全性を高めることなどが重要であり、そのために放射性廃棄物の量を減らすための技術開発が必要です。この一環として、放射性核種を廃棄物から取り除く除染法の開発を進めています。そのひとつの方法として、加温加圧にすることによって超臨界状態となった二酸化炭素を分離媒体に利用し、更に界面活性剤を添加する除染法について検討しました。その結果、放射性核種の模擬物質である酸化ユーロピウムを超臨界状態の二酸化炭素に直接溶解することに成功しました(トピックス9-2)。
原子力施設等から発生した放射性廃棄物を安全に処分するためには、その中に含まれる放射性核種の種類と濃度を把握し、評価することが必要不可欠になります。
このため原子力機構から発生する放射性廃棄物に含まれる重要核種に対して、コストを抑えつつ定常的に分析できる手法の開発を進めています。これらの分析手法により得られた放射能データの信頼性を確保するため、既知量の放射性核種を含む溶融固化体標準試料の作製方法について検討し、揮発性が高いため固化体中への保持が難しい14C,36Cl等を含む標準試料の作製方法を開発しました(トピックス9-3)。