図13-9 HNO3-TBP系におけるNpの分配係数
図13-10 Np(V)の存在割合とHNO3濃度との相関
ネプツニウム(Np)には、半減期の長い同位体(237Np:214万年)があり、従来の使用済燃料再処理法では核分裂生成物等と共に放射性廃棄物として地層処分されます。高速炉燃料再処理では、抽出溶媒であるリン酸トリブチル(TBP)を用いて、照射済燃料を硝酸(HNO3)に溶かした溶解液からウラン(U)及びプルトニウム(Pu)とともにNpを回収します。高速炉では回収したこれらの物質を再び燃料として装荷するため、放射性廃棄物の低減につながります。
Npは原子価によりTBPへの抽出率が異なり、Np(IV)及びNp(VI)は易抽出性、Np(V)は難抽出性を示します(図13 -9)。そのため、Npを抽出するためには、原子価をNp(IV)若しくはNp(VI)に調整する必要があります。Np(V)は、HNO3によりNp(VI)に酸化されることが知られているため、Np(V)の存在割合に及ぼすHNO3濃度依存性を評価しました(図13 - 10)。その結果、HNO3濃度が高いほどNp(V)の割合が減少する傾向を示し、Np(V)の酸化を促進させるためには、溶液中のHNO3濃度を高くすることが有効であるとの知見を得ました。従来の再処理法からPu分配及び精製工程を削除した簡素化溶媒抽出法では、この性質を利用してフィード溶液中においてNp(V)をNp(VI)にできるだけ酸化します。
この効果を確認するために、小型遠心抽出器を用いた向流多段抽出試験を高レベル放射性物質研究施設(CPF)において実施しました。フィード溶液には高速炉の照射済燃料溶解液を使用しました。フィード溶液のHNO3濃度が3mol/dm3の場合は9.9%のNpがラフィネート(抽出残留液)に移行したのに対し、5mol/dm3に調整すると1.3%未満に抑えることができました。これは、フィード溶液のHNO3濃度を5mol/dm3に調整したことにより、Np(V)がNp(VI)に酸化され、NpのTBPへの抽出が促進されたためと考えられます。
本研究により、フィード溶液を高HNO3濃度(5mol/dm3)に調整することによりNpをU及びPuとともに回収できることを実証しました。