8-13 電解酸化によるルテニウム除去時間の短縮

−ガラス固化工程の安定化を目指して−

図8-32 Ruの電解酸化装置の概要

図8-32 Ruの電解酸化装置の概要

 

表8-2 電解酸化試験条件

表8-2 電解酸化試験条件

 

図8-33 各電解酸化条件におけるRu濃度の時間変化

図8-33 各電解酸化条件におけるRu濃度の時間変化

Ruの約3000 mg/Lの溶液を、表8-2のA〜Eに示した条件で電解実験を行った結果を示しました。横軸の電解時間に対して、縦軸は初期濃度を1.0とした時の濃度を示したものです。AとCの条件の時に短い時間で、より早く電解ができることが分かりました。

ルテニウム(Ru)は白金族元素で主要な核分裂生成物のひとつです。高放射性廃液(HLLW)は最終処分のためにガラス固化しますが、白金族元素は溶融ガラスの流動性や通電性に影響を与えるため、事前にHLLWから除去することでこれらの影響をなくし、溶融炉の運転をより容易にすることができます。

Ruの四酸化物(RuO4)の沸点は金属酸化物の中でも特異的に低いため、室温でも高い蒸気圧を持ちます。この性質を用いて、HLLW中に存在するRuをこの四酸化物まで酸化することで気相へ移動させることなどにより、液中から除去することができます。Ruを酸化する方法として、試薬等を使用せずにRuを電解し酸化する方法(図8-32)があります。この方法の有利な点は、分離のためにRuの原子価を調製したり、化学薬品を添加する必要がないことですが、欠点としては電解酸化に時間がかかることがあげられます。そこで、電解速度を向上させることを目的に、電解条件として基本的な四つの条件(表8-2)について実験を行い結果を図8-33に示しました。


(1)温度の影響(条件AとBの比較)

電解液の温度を上げることにより、イオンの移動が容易になるため、温度が高いほど電解時間を短縮することができました。

(2)促進剤の影響(条件AとCの比較)

HLLW中に存在するセリウム(Ce)により、効率的にRuを気相へ移動させることができました。これは、Ruの電解酸化と並行して、比較的安定な酸化性の高い四価のCeが生成することからRuO4の溶液中での還元が抑制されるためと考えられます。

(3)蒸留・還流(条件AとDの比較)

温度を上昇させて電解を実施した場合に、蒸発した水分を電解液に戻さない場合(蒸留)と電解液の系に戻す場合(還流)について試験を行いました。その結果、還流・蒸留ともに電解にはほとんど影響を与えないことが分かりました。

(4)隔膜(条件AとEの比較)

対象とする溶液がHLLWであることから、装置のメンテナンス性等を考慮して、装置はなるべく簡素にすることを考え、電解槽に隔膜を用いない状態での実験を行いましたが、電解時間を短縮するためには隔膜が必要であることが分かりました。

以上の結果から、温度を高くし、Ceの存在下で、隔膜を用いることにより電解時間の短縮(約1/3倍)を図れることが分かりました。

本研究は、文部科学省からの受託研究「次世代燃料サイクルのための高レベル廃液調整技術開発」の成果の一部です。