8-4 トレンチ型処分施設の安全性向上のための検討

−放射性物質の移行量低減のための施設への降水浸透抑制方策−

図8-11 トレンチ型処分施設の上部覆土内での水の流動モデル図

図8-11 トレンチ型処分施設の上部覆土内での水の流動モデル図

上部覆土条件として、Model 1は厚さ25 cmの低透水土壌層の上部に遮水シートを設置し、Model 2は遮水シートを設置せず低透水土壌層の厚さを50 cmに設定しました。

 

表8-1 表面流出量/蒸発散量/上部覆土への浸透水量の評価結果

年間平均降水量の約44%の水量が上部覆土へ浸透していく結果となりました。

表8-1 表面流出量/蒸発散量/上部覆土への浸透水量の評価結果

 

図8-12 廃棄物層への浸透水量評価結果

図8-12 廃棄物層への浸透水量評価結果

低透水土壌層を透水性が十分低いものとすることにより、廃棄物層への浸透水量を十分に低減する効果があることが分かります。

 


トレンチ型処分施設では、放射能レベルが極めて低い金属,コンクリート及び充てん・均質固化体を埋設することを検討しています。施設は地下水位より上部に設置するため、施設の安全性では、降雨が廃棄物層へ浸透し放射性物質が環境中へ移行するのを抑制することが重要となり、廃棄物層への浸透水量を適切に評価することが重要となります。

そのため、図8-11に示すようにトレンチ型処分施設の上部覆土内に排水層,遮水シート及び低透水土壌層を設置したModel 1,遮水シートを設置せず低透水土壌層を厚くしたModel 2を想定して廃棄物層への浸透水量を評価しました。具体的には、国内の気象条件を用いて上部覆土への浸透水量を評価するとともに、上部覆土内の遮水シートの設置条件及び低透水土壌層の透水係数を変化させることにより、廃棄物層への浸透水量を評価しました。

気象条件は関東地方の1地点で年間降水量が約1200 mmの地点を選定し、日単位の気象データ(降水量,日射量,気温)を取得しました。取得した気象データからガンマ分布及びフーリエ級数により気象データの統計情報を関数化して100年間の疑似気象データを作成して用いました。遮水シートは標準的な透水係数(1×10-11 m/sec)を設定し、設置条件は、遮水シートにおける1 ha当たりの傷の個数と遮水シートに若干のたわみがある状態(good)と一定のたわみがある状態(poor)を考慮しました。また、低透水土壌層の透水係数を砂質土から粘土にあたる値に変化させて評価しました。

これらの条件に基づいて、トレンチ型処分施設における表面流出量,蒸発散量,上部覆土への浸透水量,排水量,廃棄物層への浸透水量を求めました。

解析の結果、表8-1に示すように年間平均降水量約1200 mmに対して、上部覆土への年間平均浸透水量は約550 mmと評価されました。これに対し廃棄物層への年間平均浸透水量は、低透水土壌層の透水係数をModel 1では1×10-7 m/sec以下、Model 2では1×10-9 m/secとした場合、図8-12に示すように上部覆土への年間平均浸透水量の1/10以下に低減することを確認しました。また、排水量は、上部覆土への浸透水量から廃棄物層への浸透水量を引いた量のため、低透水土壌層が低透水性になると排水量が多くなることを確認しました。

以上の結果より、トレンチ型処分施設の廃棄物層への浸透水量を抑制するためには、低透水土壌層を設置することが有効であり、更に遮水シートを設置することにより浸透水量の抑制効果が一層高まると考えられます。